ミーハーでごめんね

ミーハーでごめんね

I AM LOWBROW, AND I'M SORRY.

永い言い訳

「私は西川美和作品が苦手かもしれない」という疑惑が確信に変わっただけだった。


ふたりの"西川美和監督自身の持つ理想であろうかわいい男"を、
ひたすらにかわいくかわいく描いただけの作品のように思えた。
設定もストーリーも、メッセージも、なにより男たちよりうんと可愛い子役たちだって、
己の欲望から産まれたもっともっとかわいい男の前では添え物にすぎない。(ように感じた)
だからこそこの作品をやたらと持ち上げる男性がうすら気持ち悪く感じる。
「ボクたちのこと、女性のあなたがこんなにもわかってくれてアリガトー♡」と、そんな声が聞こえてくる。
あんまり男だからとか女だからとか言いたくないのだけれど。


"リアリティのあるものにしたいリアリティのあるものにしたい"というこだわりや主張は強いものの、
"目の前の男をかわいく撮りたい"というこだわりや主張のほうが勝っていたように思えた。
なんか、同人誌とかライトノベルとかよくわからないけど、
ふたりの男は俗にいうそういう系統の描かれ方をしていたような印象。(個人の感想です!)
わかりやすくいうと、描かれていたふたりの男のBL的な展開も容易に妄想できる、というか。
(その分野にはまったく詳しくないのですが)
そういう意味でこのふたりの男のかわいさにくすぐられない女のほうが少ないのではと、というくらい、ふたりの男がかわいかった。
それは「確信犯」というよりは、"西川美和の「欲望」"のひとつだと思う。私は。


そんなかわいいふたりの男が揃って単細胞なキャラクターなのも気になった。
監督はこういう男がかわいいと思ってるのかな。
真逆の、「繊細」という印象を受けたひとももちろんいると思う。
そういったブレがあるように感じ取れる理由は、男を「かわいいかわいい」と言いながら、
わりと大雑把に演出していたからなのではないか。




作品そのもののセンスはよく、カット割りや音響などの操り方はさすが。
とくにメインビジュアルにもなっている海のシーンは最高だった。
だからこそ、あのラストのベタすぎる大団円にはかなーーーりドン引きしてしまった。。


キャストは良かった。みんなうまい。
なかでも深津絵里の透明感と"いそうでいない"あのリアルなキャラクターの質感はお見事。
主人公を演じた本木雅弘は華やかさの出し引きが上手で、
とくに子供と接するときの探り探りな感じや、突然キレたりする振り幅が見ていて楽しかった。
竹原ピストルさん、あんまりよく知らない方だけど、演技がうますぎないあたりが逆にリアリティがあってよかった。
池松壮亮・黒木華と、若手実力派のキャスティングも絶妙。
いやらしすぎる池松くんと、まったくいやらしくない華ちゃんの対比もおもしろかった。
戸次重幸さんがいわゆるステレオタイプのイケイケテレビマンを演じていたのは笑った。
兄弟役の子役のふたり・藤田健心くんと白鳥玉季ちゃんは言わずもがな、素晴らしい演技だったと思う。
お兄ちゃんのほうは年頃のせいなのかちょっと固かったけれど、それもピストルさん同様にいい味が出ていた。(ちとイケメンすぎる気はするけど)




『夢売るふたり』を観たときにも感じた"素直に作品を楽しめない違和感"は、
「自分は鑑賞者にコレを見せたい」というよりは「自分は自分にコレを見せたい」という意思のほうがありありとしているだからなのではないのだろうか、というか。
私が勝手に思い込んでいるだけだろうし、私が監督と同性だからこそ、そう思い込んだものが評価されている嫉妬も大いにある。
それに直面すると自分の小ささが浮き彫りになるようで、勝手に傷ついたりしている。


だから、技術的・内容的には「イイ映画」だとは思うけれど、個人的には好きになれない。
好きなひとには、ごめんなさい。