ミーハーでごめんね

ミーハーでごめんね

I AM LOWBROW, AND I'M SORRY.

夢売るふたり

泣けも笑えもしなかったけれど、見ごたえのあるいい映画だった。
"夫婦で結婚詐欺"なんていう映画のキャッチコピーからてっきりもっと笑える内容かと思いきや全然。
全然笑えない。むしろ怖かった。


ストーリーはおもしろかったです。
俯瞰した人間模様の描き方に監督が"美女"であることの説得力がある。
登場人物の心理描写や演出も見事。
序盤、絵にかいたような良妻だった松たか子が物語を追うにつれあんなにあわれな醜い女に化けるなんて。
こだわりを感じるスキのないつくりで、こういった作品がもっと日本の映画として評価されるべきだと思いました。
湿っぽい空気感も良い意味で気持ちが悪くて、季節の変わり目にどこか身体がだるいような感じ。


キャスティングは甲乙付け難く、とても良かったと思います。
役者さんの演技は全体的に気合いを感じました、それぞれがしっかりと与えられた仕事をしています。
夫婦ではたらく結婚詐欺の実行犯・夫を演じるのが阿部サダヲというのもリアリティがありました。
逆にぽんぽんうまくいっちゃう詐欺行為にはリアリティはなかったかな。
そこが詐欺の司令塔を演じる妻・松たか子のリミッター振り切れちゃってる感を増長させていました。
ねじれていく夫婦の様子に引きこまれます。


ラストは納得の結末。
主人公夫婦の詐欺被害にあった女性たちが皆明るい方向へ歩めたのが救いです。


作品のなかで色んな女たちがもがいている。
自分も女だから?共感できるところが少なかったから?、あまり残るものがなかった。
淡々と描かれていたこの作品の感想は、実に淡々としたものでした。
後味が悪いような、逆にこの物語に解放されてスッキリしたような。
鑑賞後はなんともいえない不思議な気分に。


映画オリジナルの原作っていうのはやっぱり良いものですね。
小説を読んでいるかのような、物語をなぞっていく臨場感がありました。


"良い映画"には違いないんだけれど、"好きな映画"ではないです。
でもそれでいいんだと思います。