ミーハーでごめんね

ミーハーでごめんね

I AM LOWBROW, AND I'M SORRY.

だから私は推しました

すごいドラマでした。


"地下アイドルと女ヲタの話"っていったら、
まぁちょっとおもしろそうだなって思うじゃないですか。
それだけでもすでに掴みはオッケーなんですけど。


攻めてるNHKの夜ドラ、
前シーズンは『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』の枠。


本作はあらゆる面でクオリティが本当にすごかった。




"地下アイドルと女ヲタの話"ではあるけれど、
ドラマの大枠に漂うそれが終始ひんやりとしたミステリータッチであること。
「推す」と「押す」ってな。
これがこちらの想像していた"地下アイドルと女ヲタの話"をいい意味で最初から覆します。


で、最終回で見事にそれらは回収されます。
ラストはそれまでの濃度や密度に対してこざっぱりしていたのがとてもよかった。



「私の鍵閉めは愛さんしかいないじゃないですか!」



ずっといた取調室で。
愛が着ていたパーカーはハナのだったんだね。
愛はハナ、そしてサニサイの最後のステージをその目で見ることはできなかったけれど、
愛が持っていたラストライブのチケットはハナによってちぎられた。
もうこれがそれだよな、ディス・イズ・イット。




私のアイドルファンデビューはいまでも5ちゃんねるでは「地下アイドル板」といわれるところにスレッドが立つ『AKB48』だったけれど、
それでも「地下アイドル」のことはあんまり知らないです。
アイドルファンなので、まったく知らないわけではないけど程度。
(でもこれも「メディア」から発信される「情報」を知っているだけなので"知ってる"というと語弊があると思う。)


でもそんな程度の私でも、いろいろリアルだな~って思って、
いちアイドルファンとしては毎回「わかる~」とか「それは知らなかった」と、おもしろく視聴していました。
女ヲタである愛(桜井ユキ)が推し・ハナ(白石聖)のためにとチャットレディの仕事でお金を稼ぐのとかすごいあーこれ…って思ったし、
お互いの距離が近すぎるあまり推しがウソついてるんじゃないかとか…あー…みたいな。


「アイドルとファンの関係」というより「人間関係」になっていって…
そうなってくると私だったらキツイ。
「アイドルとファンの関係」でいたいもん、一方通行がいい、趣味だから。
私はアイドルには「人間関係」みたいなものとは別の次元に存在していてほしいから…
そういった部分はやや違う界隈であれど同じアイドルファンとしては揺さぶられました。


けれどこのドラマは「人間関係」を描きます。
「人間」がつくりだす「人間関係」があってはじめて「物語」ができるということを鮮やかに描きます。それが「ドラマ」です。


その「ドラマ」が私自身が持っている気持ちにスッと入ってくる。
だからフィクションなのに刺さるし、ストーリーが進むにつれて濃度や密度が増していく様子にすごくリアルを感じる。




このドラマのすごいところはそんなふうにこちらにいろいろ考えさせてくれる余白がある。
「地下アイドルの闇が~」的な見方もできそうなものなのにそうはならない。
"地下アイドルと女ヲタの話"とか結構なパワーワードだし、
それを押し付けようともできるけれどそれはしない。
実際にそのふたりが主軸になる物語なのだけれど、
そのふたりをちゃんとひとりひとりの「人間」として描いているんです。




役者さんの演技、とくに静かだけれど熱い変化で魅せてくれた桜井ユキさんの熱演や、
森下佳子による秀逸と言わざるを得ない脚本もさることながら、
その一番大きな要因は映像だと思います。
いろんな煌めきを映した映像が本当に綺麗で。


「アイドル」はもちろん、「女ヲタ」側もそういったふうに映します。
"地下アイドルと女ヲタの話"だけれど、終始「人間」の煌めきに焦点を当てているように感じます。





カメラワークとか演出とか質感とか、とにかく映像が綺麗で。
"地下アイドルと女ヲタの話"だと思っていたのに、
気がついたら「人間」の美しさというものに心奪われているんです。


そして、それをちゃんとつくりたい、という制作側の真摯な意思もまた伝わります。
ドラマも泣けるけれど、そんなものづくりの精神にも泣かされるんです。


たぶん、映像をいちばんわかりやすく表現することばは「エモい」だと思うのだけれど、
そう形容することすらためらわれる美しい視界。
こんなすごい映像を土曜日の夜23時30分から放送の30分ドラマで見せられて。
これが贅沢以外の何であるのかと。
『QP』ドラマ版『HiGH&LOW』を見たときを思い出します。
あまり前のめりにドラマを視聴しているわけではないので、
そういったドラマにうっかり出会ったときはとにかくラッキーという感じです。




映像が振り切れていることをはじめ、
ドラマが本当に見ごたえがあって本当におもしろいのでみんな見て…(終わった)
再放送待ったなしでしょNHKさん。
"地下アイドルと女ヲタの話"と取っ掛かりはイロモノを見る気持ちでいいからもっともっとたくさんのひとに見て欲しい。


「人間」が、美しいから。


っていうか総集編版でいいので映画にしてほしい、映画館で観たいです。
本当に素晴らしいドラマでした。
受信料は、無駄になってない。




("アイドルのドラマ"つながりで、そういえば吉沢亮ってドラマ『武道館』に出てたな~ってなんかしみじみしちゃう。)