ミーハーでごめんね

ミーハーでごめんね

I AM LOWBROW, AND I'M SORRY.

ベイビー・ドライバー

私のなかで主人公・ベイビーは、「かわいそうな男の子」で終わってしまった。
だから、映画のあとの物語を知る由もない私にとっては、
ベイビーはずっと「かわいそうな男の子」なのだ。


そういうところがカンに障る作品だった。


実際に全体的にはポップだし、スタイリッシュだし。
(オリジナル版も日本版も、ピンクがキーカラーの宣伝ビジュアルがすごくイイ!)
あるときまではすごくおもしろかったし、楽しかった。
けれど、主人公・ベイビーが「かわいそうな男の子」にしか思えなくなったときから、
映画にうっすらとした不信感を抱くようになった。




おもしろかったし、楽しかった。(復唱)
でもそれは"ベイビーという「かわいそうな男の子」"をつくりあげて、
彼の「境遇」を人質に取ることで、より質のいいエンターテイメントづくりに生かそうとしているように思えてしまった。
そうなってくると、そういうのは好きじゃないなぁとなってしまうんです。
いろんな意味でしんどいなぁと感じてしまいました。


途中まではベイビーはクレイジーなキャラクターとしてポップな存在であったわけで。
けれどそれまで目にしていた「クレイジー」な部分は、
実はベイビーが「かわいそうな男の子」がゆえの副産物だったという。
シリアスのさじ加減があまりうまいと思えず、私にはそう映ってしまった。
かわいそう以外の「設定」もとてもユニークでおもしろいのだけれど、
それらを映画の都合に合わせて小出しにしてくるので、
キャラクターの「個性」としては弱く、もったいないなぁと。


カッコいいシーン、ハッピーなシーン、キュートなシーン。
思い返すほどにすでに(個人的に)変なフィルターがかかってしまっていて、
たった数分前のそれらすらも、私は奪われてしまったのかとちょっと唖然となった。




いや、すごく好きなシーンたくさんあったんですよ。
冒頭のカーチェイスののちのミュージカル映画のようなワンカットシーンはオープニングクレジットもソークール、
家で里親のジョーと一緒にベイビーが音楽に身を委ねる姿、
ベイビーがまるでそれこそ赤ちゃんが立った!、と思うかのようなデボラとの手探りな恋。
(それにしてはかなりグイグイだった)
ほかにも、たくさん、たくさん。


カーアクションを含むアクションシーンと、
本作のウリ(?)である音楽とのケミストリーは超最高だし、
アクションシーンに限らず、それぞれのシーンにあった性格の音楽が、
それぞれにしっかりきっちり当てられているので、
終始ノリよく観ることができました。


ベイビー(アンセル・エルゴート)はとても背が高いのに、
本当にさながら赤ちゃんのようにバブくて、
あまり似合わないサングラス姿(ちょうかわいい)と、
それらからは想像できない超絶ドライビングテクニック!、には悶えるほかない!
バディを演じたジョン・ハムさんは、私の好みど真ん中の素敵なオジサマでした♡




あのエンドでそこまで悲観的にならんでも!、と自分でも思うのだけれど。
ど終盤のベイビーのフォローの仕方はかなり陳腐で、
やっぱりベイビーは作品のために「かわいそうな男の子」としてつくられたのだと妙な納得をしてしまった。


そんな作品山ほどあるやん!、と自分でも思うのだけれど。
やっぱりつくり手の意識は明らかに明るいエンターテイメントのほうにあると思えてしまう点で、なんだか受け入れ難かった。




「映画」というものに裏切られたような感じで、ズタズタなんですけど。
それは作品とは別のところで、完全につくった側の意思と私が、
"合わなかった"というだけの話なのだけれど。


ま、泣いたけどね!(涙腺ガバガバ)