展覧会のコピーに、「(坂本龍一)教授、これはアートですか?音楽ですか?」ってあるけれど、
明らかに「アートです!」っていう感じにゴリゴリにアート。
音楽…というより音は付属品のような作品ばかりでした。
ただ混雑の関係で定員制の作品がふたつ観れなかったので、
それらが私の期待していたような作品だとしたら惜しいことをしたなぁという感じですが。
もっと大人から子供まで楽しめるようなわかりやすくてキャッチーな作品、
ユーモアのある作品があっても良かったのではと思いました。ちょっとカッコつけすぎかな。
「やってみたらアートになりました〜」みたいな作品が多かった。
せっかく『アートと音楽』っていう、絶対に楽しいであろうタイトルなのに全体的に明るくないのが残念。
平面作品も、インスタレーションに敵うような力のある作品はなく、弱かった印象。
最初に展示されていたセレスト・ブルシエ=ムジュノの『クリナメン』が、
この展覧会のテーマをよく表しているように感じました。
よってつかみはバッチリ。
ただ観進めていくと湧いて出てくるお洒落風で洗練された風の作品は退屈でした。
そういうものはあまり響いてこない。
基本的には単純な、アイディア出したもん勝ちなアナログな作品に惹かれました。
レコードプレイヤーを用いた作品はふたつあったのだけれど、それぞれ八木良太(氷)、
バルトロメウス・トラウベック(ベニヤ)、と作家が違うんですね。
あまりにコンセプトが似ているので同じ作家の作品かと思いました。
大友良英リミテッド・アンサンブルズの作品もあれだけ大々的にやってくれればそりゃあもう壮観です。
実際に作品群のなかに入り込んで体感できる、楽しい作品でした。
最後の池田亮司の展示室は、そんなアナログ勢を一蹴するかのような計算されつくした完璧なデジタルアートが圧巻。
クリエイターとして好感が持てるのは前者のいきあたりばったり系より、後者の明らかに綿密にデザインされたものです。
でも池田亮司が展示してた『data.matrix [n°1-10] 』って同会場で2009年に開催された、
『池田亮司 +/−[the infinite between 0 and 1] 』展での展示作品のミニサイズ版だよね?
ビートたけし×ヤノベケンジによる『ANGER from the Bottom』はタイミングよく、動くところを観ることができました。
怒りをあらわにし、水を口から吐き出しながら現れたモンスター。
メタリックな光る素材に反射して写るのは、それを撮ろうとするひとたちが向けるカメラや携帯カメラのフラッシュや赤いライト。
それが、なんだかモンスターがひどく可哀想に思えました。
いまの世の中の一端を表しているように感じました。
コレクション展は横尾忠則と亀倉雄策の力強いグラフィック作品が序盤からこちらのテンションを上げてくれます。
帰りにギャラリー付きのカフェでオーナーさんと話し込み、そこで務めている方と駅まで一緒に帰りました。
アートはスッとひとをつなぐんだよなぁ、としみじみ。
同じ作品に触れたことで体験を共有できる。
たとえ感じたことがまったく異なっていても、関係が成り立つ余白がある。
最近は情報重視で話が進む(ような気がする)アイドルの世界にどっぷりだったので久々の感覚でした。
本当に楽しかったです。