ミーハーでごめんね

I AM LOWBROW, AND I'M SORRY.

主戦場







素手でノーガードの殴り合いである。
その名のとおり、そこはまぎれもない「主戦場」であった。



そう、「主戦場」。



ファイターよろしく出演者たちが言葉を放つたび、こわかった。
人間が考えていることや思っていることを言葉にして発することがこんなにもこわい。
自分のこと以外の人間のことは当然「わからない」にせよ、
絶対に「わかり合えない」ことがあるのだ。知らなかったわけじゃないけれど。


でも気がつくと殴られていたのは私だった。
アッパーくらって脳震盪を起こしている。ずっと頭が痛い。





ところが。


匿名での暴力がインターネットに当たり前のようにあふれかえっているいま、
生身の本物の人間が、こういったかたちで映画に登場するだなんてすっごいな~~~!
と、思っていたら、



なんか揉めてたんですけど。
こうなってしまうと、こちら(私)の映画に対する姿勢も変わってきてしまう。




ハイテンポかつクールなスタイルでグイグイ惹きつけて、
それでいて一貫してドライな視線であったのがよかったのに。


本作は「ドキュメンタリー映画」と謳ってはいるけれど、それではないと思う。
映画が伝えたいことを理由に「悪役」として描かれているひとがいるからだ。
終盤の制作側の主張はかなり強いものだったけれど、それでもスマートだった。
だからこそこちらも作品の姿とパワーをそのまま受けとめていたのに、
こんな感じで揉めちゃってるの、なんか後味悪いというか…




映画の外で、"誰が「悪」だ"みたいなことにはなってほしくなかった。
作品の主張のなかに「悪役」が存在することを否定するつもりはないけれど、
「悪役」としての配役がなされた経緯のようなものが、
こういったかたちでハッキリと知らされることになってしまったのは、残念すぎる。
こんなこと言ったら、だからこの国は変わらないだのと言われてしまうのだろうか。
とにかく、一連のいざこざを知る前に観ることができて本当によかった。




映画では、韓国のアイドルに触れていると、どうしてもぶち当たる従軍慰安婦問題について、
なにがどうしていまもこんなにこじれてしまっているのかということが、
貴重な資料と過去のメディアというメディアを遡って、とてもわかりやすく説明されている。


その点では本当に見るべき映画だし、見なければならない映画なのだけれど。
なんかケチがついちゃった感じで惜しいな~悔しいな~。
「ここが本当の主戦場(ドヤ」とか言いだしたらどうしよう。
そんなオチだったら本当に萎えるんですが。



と、いったんは思ったりしたんですけどね。



逆を言えば、"慰安婦問題がなぜこんなにこじれてしまっているのか"ということを、
本来伝えるべき立場のメディアが、この映画の「ケチ」をきっかけにようやく動いたのだ。

この映画にようやく引っ張り出されてきたというべきか。
このことで、いまの日本の報道機関の在りようの一端があぶりだされたようなものだ。
そういった意味で、この映画の功績はとてつもなく大きい。


そして、こんなにも国にとって都合の悪いことを私たちの目に留まらないようにする力が、
現在進行形で動いているという事実はショックだった。
これは知らなきゃいけないことだと思う。
それらは映画そのものだけでなく、映画を取り巻く環境も含めて物語っている。
たくさんのひとに観て欲しいと願う。