ミーハーでごめんね

ミーハーでごめんね

I AM LOWBROW, AND I'M SORRY.

花筐/HANAGATAMI

すごかった… 大林宣彦監督が余命宣告されてなお撮った映画、本当にすごかった。
映画本編の前に、大林監督のインタビュー映像が流れたのだけれど、
「まじでこのひとがこの作品を!?」と、いまでもにわかには信じがたいくらいすごかった。


大林監督といえば、私のなかでは AKB48の『So long!』だったり。
これまたクセがすごいんですけどね。




最初はやばい、やばい映画だ、と思いつつもふんぞり返って観ていたのだけれど、
終盤はパワー勝負に負けて気がついたら泣いていた。


全編にわたってに完全にどうかしている様子がすごく色気があって。
そんなやばくてどうかしている映画はなんと上映時間約3時間。
観ている最中はその濃厚な世界にどっぷりと浸かっていたのでそうは感じませんでした。
そのあとどっと疲れたけど(笑)




とにかく、画がやばい。
わかりやすくいうと一見安っぽいCG合成によるカットの羅列であるにも関わらず、
ずっと見ているとまるでアニメーションのように感じられる独特な表現手法に思えてくる。
横尾忠則のコラージュ作品みたいな。そこにスキがないのでパワーもすごい。



全体的にテンションも劇画調なので余計にそう感じる。


ワンカットワンカット、監督の凄まじいこだわりと執念と伝えたい想いがすごくて、
アングルとか効果音の使い方とか、いちいちそうくるかという感じ。
とにもかくにも、いちいちこまかいところまでとても凝っている。


それらは物語がすすむにつれどんどん蓄積されていき襲いかかってくる。
やばいとしか思わなかったはじめのほうの部分もちゃんとそのパワーの一部になっている。


フェチシズム全開のカットらはそれぞれの使用の仕方も単調ではない。
オトコが全裸で馬に2人乗りして海辺を走ってるの最高すぎない?
アート作品を見ているような気分にさせらながらもどんどん映画は進んでいく。
明らかに、ザ・イメージ!、というような、抽象的なカットも多数登場するのだけれど、
それが、いわゆる狙ったそれっぽい作品にするためのものではなく、
監督がどうしてもこれが伝わってほしいんだよというような強い意志が感じられた。




「作家性が強い」っていうのは本作のような作品のことを言うのだろうなと。
こういった笑っちゃうくらい凄まじいクセの強い映画と、今後出会えるのだろうか。


一本の映画は、まるで一枚の絵画のようだった。


登場人物はそこに描かれていて、あくまでもただただ絵画のパーツでしかない。
役者自身の持つ魅力も完全に描き手によってコントロールされている。
いままで観た映画作品のなかでもダントツで「作家性が強い」作品だった。


登場人物の喋り方も独特!
いかにもセリフを読んでいるように演技しているひともいれば、
いわゆるしっかりと演技をしている風のひともいて、
それぞれの役者に対するディレクションが違うのがわかる。
そのコントラストは素っ頓狂で感覚的な映像のアクセントになっている。
常盤貴子の演技、個人的にはすごく苦手なのだけれど、
本作にはとても合っていてよかった。




鵜飼を演じた満島真之介ははじめてハマり役を見た感じ。
めちゃくちゃヤバくてエロくてキモくて最高だった。軽率にファンになってしまった。
窪塚俊介のヒモい感じもよかった。(お兄ちゃんのヒモい演技も大好き)
昭和のお衣装を着た現代の若手(?)俳優は最高!


未来穂香ちゃんが「矢作穂香」ちゃんに改名していてびっくり!
未来~が芸名で、本名で活動することにしたのだそう。
ずいぶん久しぶりに見たな、と思ったら、留学していたそうで、
そんでもって2017年から所属事務所が研音になったそうで。強い。
めちゃくちゃ美しい美少女なので、今後の露出も楽しみです。
と、いうかメインキャストのなかでダントツで若かったと思うのだけれど、
あのメンツのなかに圧倒的ヒロインとして存在していたことがすごい。


吉良という鵜飼とは別ベクトルのヤバいキャラを演じた長塚圭史と、
主人公・俊彦の叔母である圭子役(これもヤバいキャラ)を務めた常盤貴子の、
リアル夫婦が揃って出演しているのもなんかおもしろい。


ほかにも豪華キャストがちょいちょい出てくる。
ナンチャンが主人公の父親役として写真ででてきたときはすげ~~~ってなりました。




俊彦(窪塚俊介)は幼くて、天真爛漫ということばがぴったりで、
物憂げな登場人物たちのなかでひとり浮いていた。
映画の中心に据えられているにも関わらず、なんだか存在感が薄くて、
窪塚俊介自体は魅力的なのにどうしてここまで埋もれるのかと思っていたのだけれど、
ラスト、残った彼にまとまりつく虚無の重さがなんとまぁ残酷であることか。
彼が中心に据えられた答えがこういったかたちで明らかになる展開はすごかった。


俊彦が言った。「青春が戦争の消耗品だなんてまっぴらだ」。
彼自身が放ったこのことばの意味を彼が知るのは、ずっと先のことになる。