観る前と観たあとでは世界の見え方が変わる。
そんな映画にいま出会えたことは本当に幸運だった。
今日がその日だった。なんと公開日である。
観終わったあと、
目の前を歩いているひと、となりに座っているひと、その席まで案内してくれたひと、
視界のなかにいるひとみんなそれぞれに人生がある、生活がある、と、しみじみと感じさせてくれた。
ひとりひとりが、とてもはっきりと見えた。
ほっぺたひっぱたかれてテメーの見てる世界はそんなひとたちがこうして生きる世界だと教えてくれるような、
なんだかはっと目を覚まさせてくれた映画だった。
映画を観る前は直前まで結構鬱屈した気分だったのだけれど、
映画が終わって、館内が明るくなって、バッグから取り出したスマホを見たら、
偶然だろう、たった約2時間弱のあいだに多方向から多数のメッセージが届いていた。
交わることのないそのメッセージらを見ては、
映画を観ているあいだになにか世界が変わったのではというようなそんな錯覚もあった。
妙に清々しい。すっきり。
映画の余韻に包まれているその時間は、
ただただ不思議な感じだった。
この映画、前情報は本当になにもない、まっさらな状態で観るべき作品だと思う。
パンフレットではポン・ジュノ先生がまるまる1ページ使ってそうおっしゃっているほど。
宣伝ビジュアルも、各々気合の入りまくった評判のいい諸外国各国のものは、むしろいろいろと察することができすぎちゃう気がする。
なんでそこをそうしたんやっていう日本版のほうが逆に訳が分からなくていいのではと。
ただまぁ後者は地味になってしまっている感は否めないのだけれど。
というわけで以下、自己責任で。
冒頭からスピード感あふれる展開であっという間に没頭して観ていた。
物語は気持ちがいいくらいガンガンとハイテンポに進む。
ただただ楽しい。ただただおもしろい。
めちゃくちゃ楽しい。めちゃくちゃおもしろい。
展開は読めないこともない部分もあったけれど、有無を言わせぬ大胆ながらもシャープな映像がそんなものをねじ伏せた。
めちゃくちゃ超スーパーエンターテイメントだった。
ところが中盤になってくると、主人公を演じるソン・ガンホの顔が歪むのと同期するかのように、
その"ただただ楽しくておもしろいエンタメ"が、どんどん歪んでいった。
ソン・ガンホのその表情の変化といったら凄まじかった。
瞳の演技があまりにも鋭い。
それはとてもことばでは形容しにくくて、見て感じることで認識できる変化。
「俳優」の仕事というものを見せつけられた気がする。
ハイテンションで一見陽気だったはずの作品がどんどん歪んでいく。
その歪みは貧富の差であったり災害であったり現代社会の暗い部分を次第にこちらに見せてくる。
そして、それもまた私自身という人間の人生であり生活であった。
知らないふりなんてできないのだ。
でも、笑ってしまうのだ。
心では泣いているのに。
主人公家族・キム家の豪快な明るさがポップさをギリギリのところでキープしていた。
惨劇と思われる部分もどこか間が抜けたような雰囲気があってケラケラと観てしまった。
キム家に「パラサイト」されるパク家の描写をおバカに振り切ったのも功を奏したのだと思う。
うそでしょ~!?って思うでしょ、でもね、
本作を観たK-POPファンはきっとここにたどり着きます。
まさかの餅ゴリに番外編を楽しませてもらえちゃうからK-POPファンはおトクだよ!
キム家、本当に強かでとてもよかった!
ソン・ガンホとチャン・ヘジンは安定感のあるTHEアジョシとTHEアジュンマ!
息子・ギウを演じたチェ・ウシクのこの秘めたるやを覚醒・炸裂させるシーンは圧巻だし、
なによりパク・ソダム~~~~~~~の娘・ギジョン!!!!!!!!
カッコよすぎる…!もうずっとずっとカッコよかった!
ふてぶてしいのにそれが超キュートなの!
ギジョンのカッコよさだけでも観る価値大なので観てくれ…
圧巻のドンデンガエシに夢中になっていると、終わっていた。
ラストのひとつ手前のフェイクにはも~~~やられた!直前に技あり一本取られた!
けれどジェットコースタームービーの終わりはとてもとても静かだった。
だからそ染み入った。
人間、人生、生活。