ネタバレしますね。
つらかった。
しつらえはさながら"「オトナ」のファンタジー"。
だからこそ"「オトナ」のつらさ"が振りかかってきたように感じたのかな。
最初からド派手なミュージカル炸裂で、
一曲目(?)が終わった直後は立って拍手したいくらい感動的でした。多幸感。超ハッピー。
音楽・音響も素晴らしかったのだけれど、それに負けじとカメラワークがものすごかった。
驚異的な長回しもさることながら、まさかの手動でカメラをぶんぶん回したり、
まさかのクレーンの一発撮りだったり、このご時世に、超アナログ!超アナログの超パワー!
映像と音楽がかけ合わさったときに発せられるパワーを久々に映画館で観た気がします。
音も画もとにかく華やか!パワフルできれい!エンタメ!大好き!
観るなら絶対に映画館で!、と推します。
パワーのある演出に反して、ストーリーは結構シンプル。
そこは個人的には良かったと思います。
だからこそ、余計なことを考えずにスクリーンに没頭できました。
脚本が映画オリジナルというのも、いいですよねぇ。
あえて「ロケ力」、と言わせてもらうけれど、
さながらアニメ的に美しいロケーションが現れて、そこはやっぱり規模が違うなぁと感嘆。
以前、同監督であるデミアン・チャゼル氏による『セッション』を観ているのですが、
監督が(相当)若くしてこの規模の映画を取り扱える力量にも改めて驚いています!
ただ、登場人物の描写が甘すぎる。
登場人物自体も結構甘く感じたので余計にそれは思いました。
だからストーリーの弱さもごまかせないというか。惜しい。
肝心の、主人公ふたりが惹かれ合う様ですら、ちょっとよくわからない(笑)
アカデミー賞がちょうど昨日行われたこともあり、オスカーオスカー騒がれていたけれど、
そのへんの甘さが気になってしまったので、
個人的にはまぁちょっとそこまではいけないわなぁと納得。
主人公ふたりは、エマ・ストーン(ミア)の存在感に対して、
ライアン・ゴズリング(セブ)はちと負けていた印象。(演技が云々ではなく!)
この没個性な感じがリアリティを生むのか、否か。
『セッション』同様、この監督はさえないヲタク男子を描くのがうまいのかな。
『セッション』でのJ・K・シモンズが怖すぎたので、
今作でもでも突然怒鳴りだすんじゃないかとどきどきしてた(笑)(怒鳴りません)
男も女も夢を叶える。
けれど、男と女は結ばれない。
そのつらさはファンタジーで構成されているからこそ、余計に現実を突きつけられるようで、
この苦(にが)みはやっぱり「オトナ」に向けたものだと思います。
ミュージカルシーンも不自然ではなくシームレスに繋がっていてよかったです。
唐突な場面もあったかもしれないけれど、それをも「演出」に昇華していました。
終盤はシリアスなシーンが続くものの、最後で大爆発するので、
観ているこちらもくすぶっているものから解放される爽快感・気持ち良さがありました。
けれど、それはタラレバの夢だった。
つらい。
こういうことって現実世界で結構あると思うんです。
「もし」を想いながら、それを受け止めて自分のなかにしまい込む。
それは年齢を重ねることで、より濃度を増していく。
かくいう私も、無理矢理忘れようとしていたことをえぐり出されたようで、とてもまだまだ「オトナ」は名乗れないけれど、すごくつらかったです。
これも人生、と割り切れる"ホンモノの「オトナ」"になるにはまだまだです。
私はまだ不自然なほどカラフルでポップなファンタジーにしがみついていたい。
とってもとっても楽しかったから、
そのつらさもとってもとっても身にしみます。
見るひとによって感じ方がまったく違うであろう、
どんな人生を歩んできたかがわかってしまうであろう、『桐島、部活やめるってよ』的な作品です。
とても良い映画でした。
そして流れるようにテレビドラマ『カルテット』第7話を見たのだけれど、
まるでそれは『ラ・ラ・ランド』みたいだった。なんて日だ。