ミーハーでごめんね

ミーハーでごめんね

I AM LOWBROW, AND I'M SORRY.

セッション

この時期、映画賞受賞作がどんどん公開されるのが楽しい~!


さて、『セッション』観て参りました。
こういう極めてエキセントリックなひとの恐怖政治、経験あるある~。
本当に、世の中には居るんですよ、こういうひと。
で、あるんですよ、こういうこと。(血を流すまではしなくとも)
そして。
向上心、野心、優越感、自信…主人公・ニーマン(マイルズ・テラー)の持つものほとんどを私も持っていた時期がありました。
もちろん、いまも持っているものは持っています!
けれど、時を経て対象への接し方が変わってきたとき、それらのカタチも変容するのです。


と、自分のことはこのへんで。




おもしろかった!
主人公に寄り添うようなカメラワークが印象的。
展開力を煽ります。
その展開も二転三転とダイナミックに進んでいくので引きつけられます。


ニーマンと"鬼教師"フレッチャー(J・K・シモンズ)の狂気の沙汰よ!
割と大雑把な脚本だったのですが、演技がもの凄くて食い入るように観てしまいました。


マイルズ・テラーのドラムさばきっぷりにびっくりです!
しかも、なんと8割が彼の音を使ったというではありませんか!すげー!
あのなんとも冴えない容姿(失礼)から繰り出されるドラムさばきからはニーマンの胸のうちがありありと見えました。


あくまでニーマンを通して伝えられるフレッチャー・音楽、というつくりも良かった。
余計な部分は一切排したことで、徐々にニーマンが精神的に追い詰められていく様子がビシビシ感じられる。
恋人・ニコルに常識では考えられないようなことを平然と言い放つシーンは、
シチュエーションと台詞のギャップが物凄くて、彼がいかに「ヒト」として壊れかけていったのかを物語っていました。
(ニコルを演じたメリッサ・ブノワ、とってもキュートでした♡)




なにより!物語の主軸となるジャズ音楽・ドラムの音がとっても楽しい。
なので、内容はなかなかキツかったけれど、あっという間の約2時間でございました。


個人的には映画『ブラック・スワン』を観たときのように、
私的な感情のせいで、しんどい、しんどい、と思いながら観進めていたのだけれど、
結果的に物語の果てに在った「音楽」にとっても救われたのでした。
音楽ってやっぱり素晴らしい!



鬱々とした展開に対してラストの清々しさが最高にさっぱりした!爽快!
さながら"魂の報復"といったところでしょうか!素晴らしい!
「終わりよければすべてよし」、というのはよく言ったものでほんとうにその通り。






以下、ネタバレします。






フレッチャーがニーマンへの、報復として「ステージ」を選んだことで、
「ジャズ音楽」という「娯楽」を結果的にただの「暴力」にしてしまったのが残念だった。
もっと純粋に、エキセントリックなひとだと思っていた。
カラッカラにさせられた尋常じゃない緊張感がフッと溶けて、
これまでの経緯が一気に人肌を帯びてしまい、ちょっと興ざめしてしまった。


ああ、ただの「暴力」だったのか、と。


先に記した私のケースのそのひとたちはまるっきり純粋だったのだ。
そこからは「師弟関係」の「し」の字も思い浮かばなかったけれど。




バスのパンクから始まる事故からステージ~ニーマンがフレッチャーに殴りかかる一連の流れの臨場感が素晴らしかった。
ひたすらニーマンを接写することで伝わる猟奇的な様子は鳥肌モノでした。


血だらけになりながらステージへ上がり、持てなくなっているドラムスティックで必死にドラムをしがみつくように叩くニーマン。
そんな彼をこれでもかと見せつけられて、とても他人ごととは思えなかったのでした。


で、無くなった楽譜は結局どうなったのよ?