丁寧に紡がれた物語は、つくり手の愛情がたっぷりとつまったものになりました。
でも、高畑勲監督、お金をかけすぎです(笑)
ストーリーは、お馴染みの『竹取物語』とほぼ同じ。
ですが、かなり好き嫌いが分かれる作品だと思います。
繊細さと力強さが共存していた作品。
鑑賞中は退屈だったものの、
終盤は気付いたら、主人公・かぐや姫にガッツリ感情移入してしまい、ほんのりと苦しかった。
観終わった直後はそれこそ夢から目覚めたばかりのような余韻アリ。
気持ちのざわめきが残ります。
作中で歌われる歌が耳にこびりついてなかなか離れない。
画がね〜。ちょっと賛否両論分かれるところかなぁと。
水墨画・水彩画タッチの独特なアニメーションが特徴的。
個人的には、ヒキの景色などは美しくて、思ったより"もつ"なぁという印象だったのですが、
キャラクターの表情のアップなどは単純に線が汚い。
荒々しさや激しさを表現したシーンでは躍動的な線の運びがそれらを助長するのですが。
けれど、巨大なスクリーンに映し出されるそれらはまるで異世界で、
ふんわりとした気持ちになりました。
ただし、ふんわりとしすぎていてところどころキツいところも。
それをスピード感のあるテンポの良さ、緩急のある展開で補っていました。
今回の表現はテレビサイズではあまり活きない気がします。
捨丸(演じたのは私の大好きな高良健吾くん!)との再会のシーンなど、
\これぞアニメーション!これぞファンタジー!/というような場面も多く、
現実世界と夢世界(?)を軽やかにいったりきたり。(先に公開された『風立ちぬ』に通ずるところです)
そのたびに「ふわっ」としたものを感じ取れます。
そしてそれらをスッと受け入れる気持ちの良さのようなものがありました。
登場人物の人間臭さがとっても良かったです。
ただ自然に生きることのできないかぐや姫の悲しさ。
かぐや姫を幸せにしようと奮闘する翁もただの頭でっかちではなく、温かさが感じられました。
媼はそんなふたりをやさしく包み込んでくれます。
キャラクターでは女童(田畑智子)が愛嬌があって可愛かったです。
やわらかく描いているようでシビアな視点もビシビシ感じたので、
そういった緊張感の緩和剤になっていたと思います。
かぐや姫を演じた朝倉あきさんの声は、とても自然で良かったです。
他の豪華なキャストの面々もピタリと合っていました。
翁を演じた地井武男さんにとっては遺作になるのだそう。
作中の地井さんの声を聴きながら、こうやって亡くなっても、
なお作品のなかで生き続けることができるのは凄いことだよなぁと改めて思いました。