ミーハーでごめんね

ミーハーでごめんね

I AM LOWBROW, AND I'M SORRY.

そして父になる

是枝裕和監督の作品を観るのは『奇跡』以来、二度目。
カンヌで賞も獲ったし!、と期待して観に行ったのですが、すこし期待外れでした。


とくに、何かを得るような映画ではないです。
だからといって、何かが残るかというとそうでもないんだよな〜。
そんな自分がちょっと残念。
作品はスッと目の前を通りすぎてしまいました。


正直、退屈でした。
主人公の設定がわかってしまうと、あとはなんとなく想像がついてしまって、
想定の範囲内の出来事が続くだけ、という感じ。
"是枝作品のスタイル"から、良くも悪くもはみ出していないんですよね。
"乳児の取り違い"なんて、結構な大ごとを、そしてそれに翻弄される親たちを、あくまでも淡々と描きます。
リアリティに欠けるのは、事件のわりにあまり登場人物たちが熱くなっていないせいかな。
登場人物の"感情"や"関係"が描き切れていなく、それらがどこかに置き去りにされてしまっているように感じました。
とくに、リリー・フランキー×真木よう子夫婦は不自然なほど、どーんと構えてましたからね。
"六歳"っていったら子供らにももっと目に見える感情の起伏があるだろうに、それも感じられず。


ふたつの家族が織りなす物語なのですが、それぞれに「日本的だなぁ」と思うところ多々。
多くは語りませんが、対照的なふたつの風景の対比が鮮やかです。
その鮮度は、ジッと撮る、是枝流の撮影方法の賜物なのでしょう。
ただ今回のそれらはキャストの力によるところが大きかったかなと。


キャスティング・キャストの演技はバッチリ。
そして豪華です。贅沢です。
福山雅治の演技が想像よりかなり良かったです。
もっと、フクヤマフクヤマしてるのかと思ったのだけれど、全然。
画的に地味だともたない作品だったと思うので、福山雅治を主人公に据えたのは大正解。
もともと持った華もあるけれど、しっかりと複雑な役柄を繊細に演じていたと思います。
尾野真千子と真木よう子は優等生で頼もしく、物語をガッチリ支えます。
リリー・フランキーの演技をマトモに見たのはおそらく今回が初めてだと思うのですが、上手くてびっくりしました。
通常状態のリリーさんよりテンションの高い役をおおらかに演じていてとっても良かったです。素敵でした。
当事者である子供役・二宮慶多くんと黄升くんの演技は、
"演技"と言うにはちょっと心配になるくらい"自然なこども"そのままで、これも是枝流…!、と唸りましたね〜。
他の出演者もとても良かったです。


ラストシーンは余白を残していて良かったと思います。
ですが、"大団円ダナー感"も否めず。
改めて作品全体の精度が問われるところですね。




以下ネタバレあります。




乳児の取り違えが、看護婦による意図的なものだったのには驚きました。
そしてそれがこの物語から生まれたもうひとつのドラマなのですね。