原作は読んでいません。
"良い映画風"、と見せかけて、なかなかに自分勝手(褒めてます)な映画。
観ている最中は退屈でしたが、後からじわじわとキます。
明確な完成ビジョンのもと、丁寧に、そしてそれにむけておそらくほぼ完璧につくられていた点は好印象。
何にも媚びず、まっすぐにつくられた映画であることは素直に評価。
品位が保てていて、作品としての完成度が高いです。
とくにカワラワークの秀逸さは特筆するに値します。
過去と現在が唐突に入り乱れ、それが主人公・知子の心情をよく表していたと思います。
ところが、それ自体はあまりうまくいっておらず、
ただの説明不足になってしまっていて、なにがなんだかわけがわからない。
その、"よくわからない感"が「表現」だというのなら、私はあまり好きじゃないかな〜。
マニアックに狙い撃ちする姿勢はただの上から目線になりかねません。
あらすじや人物相関図を確認してから観るのがオススメかも。
そういった部分を察することを必要とする映画なので、
人によっては前情報がないと完璧に置いてけぼりをくらいます。私がそれ。
私の空っぽの頭では三人の関係が終盤でようやくわかったような感じなのです。(遅)
これじゃあ楽しめませんよー。
知子は恋愛でボロボロになったかと思えば、次のシーンではきちんとした身なりで仕事をしていたり。
切り替えが早くて、なんだかんだ強くてしたたかな女性なんだなぁと思いました。
そしてそれが、男性陣の弱さをいっそう浮き彫りにします。
ほぼ主要人物の三人しか登場しないので、濃密な空間を体感。
知子の愛人・慎吾の妻子の姿を出さなかったのは大正解。
そのおかげで内容の割にはドロドロ感が無く、むしろラストではスッキリしたくらい。
役者の演技が凄いです。
主人公・知子を演じた満島ひかりはベテラン・小林薫にも決して劣らない、素晴らしい演技でした。
彼女のスタイルは松田龍平と似ていて、いつも同じような演技・風貌なのに、
しっかりとキャラクターを演じ分けます。
今回は"女性性"を厚く纏い、目の離せない、魅力的な主人公を演じきっていました。
小林薫は、器が大きそうで実はどうしようもない感じ、の慎吾を繊細に演じます。
満島ひかりと小林薫は今季、ドラマ『Woman』で家族(?)設定で共演しているので妙な感じがありました(笑)
そちらとの演技を比較すると、ふたりがいかに演技力が高いかがわかると思います。
涼太を演じた綾野剛も安定していて良いです。
ただ、先のふたりと比べると存在感が薄かった。
箱庭感。倦怠感。
じっとりとしていて居心地が悪いのだけれど、そこから動くことができない魔法。
『夢売るふたり』と後味が似ています。
ということで、やや地味ながらも「良作」。