ミーハーでごめんね

ミーハーでごめんね

I AM LOWBROW, AND I'M SORRY.

世界にひとつのプレイブック

「ひとりじゃないよ」、ってぽんと肩をたたいてくれるような映画。
観たあと気持ちがスッと楽になる感じがしました。
作品としてはなかなか地味です。




まず、邦題がダサいね!!!


原題は『SILVER LININGS PLAYBOOK』。
『SILVER LININGS』は"銀の裏地"という意味で、
『Every cloud has a silver lining.』="どの雲にも銀の裏地がついている。"ということわざがあるそう。


・どんな悪いものにも良い面はある。 ・どんな悪いことにも良い面がある。
・不幸の裏には幸いあり。 ・憂いの反面には喜びがあるものだ。


なとどいう意味で使用されたりするそうです。
『PLAYBOOK』は"脚本"、" アメフトプレーブック(各チームのフォーメーションを図解したノート)"という意味。
ぼんやりですが、映画を観たあとだと洒落た言い回しで本作のことをよく表しているのがわかります。
そんな素敵な原題をなんでぶち壊すんでしょうね…これに見合った邦題を付けるのが配給会社のお仕事でしょうに!!!




とにかく設定ありきな映画。
各設定が突出していて、それらを繋げて繋げて…という感じ。
設定重視だから流れがやや唐突。
でも全体を通して見ると流れはとても自然という不思議。こういうところにつくり手の力量が表れます。
ただ、登場人物のキャラクターも"個性"というよりは"設定"に感じられてしまいました。
で、私は設定が物語を動かしてしまうのが明らかにわかってしまう作品が苦手なんです。
(余談ですが、漫画『ONE PIECE』を途中脱落したのもそのせい。空島編までが限界でした…。)
設定そのものを楽しめるか、でこの映画を愛せるか否かも分かれるかと思います。


今年のアカデミー賞では作品賞を含む8部門にノミネートされたとのこと、
そのうち全演技部門でノミネートされ、主人公のひとり・ティファニーを演じたジェニファー・ローレンスが
主演女優賞を受賞したとのことで結構期待していたのだけれど…私にはそのへんはちょっとよくわかりませんでした〜。
もちろんキャストの演技はとっても良かったと思うのですが。
ジェニファー・ローレンス、若干22歳であの貫禄、あの変幻自在な演技力は確かに凄い。
ここでオスカーも獲ってこれからもっと活躍の場が広がるでしょう。
もうひとりの主人公・パットの母親を演じたドロレス・ソリータの演技がチャーミングで素敵。
パットの友人役を演じたクリス・タッカーが凄くいい味を出していました。


主人公ふたり・ブラッドリー・クーパー演じるパットとティファニーが
一緒にダンスを踊ることになるという流れはありがちなんだけれど、
最後に披露するダンスが下手くそなのが他の映画と違うところ。(しかもじわじわくる下手さ・笑)
あらゆることの正解や価値感はひとそれぞれだということがよく現れていたシーンだと思います。
そのダンスシーンはカメラワークもとても良くて、
あえてダンスをしっかり見せない=(あえての)下手くそだから、
主にふたりの表情をアップで映し出す=ふたりの感情をストレートに撮る、
というふたつの意味で大きな役割を担っていました。


小さなコミュニティーのなかでの出来事ですが、それが「身近なひとを大切に」というメッセージに思えます。
不安定だった主人公ふたりが、いつのまにか憑き物がとれたようになっていく様子が観ていて穏やかな気分になりました。
前半ではふたりの様子を徹底的に、重点的に描くけれど、物語が徐々に進むにつれて、
周りの登場人物も実はそんなにマトモなひとなんていないんだぜ、ということをさりげなく描いていたのが良かったです。
途中から、話の流れがだいたい読めてしまったのが残念。
ハッピーエンドにならざるをえない展開ですが、それだからいいのです。