ミーハーでごめんね

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I AM LOWBROW, AND I'M SORRY.

ライフ・オブ・パイ / トラと漂流した227日

余韻がすごい。
不思議な気分にさせられる映画でした。
私自身、主人公・パイに話を聞いていた小説家と同じ気分になったし、
その小説家の存在が、観る側があまりパイとトラのリチャード・パーカーの物語に寄りすぎないように
けん制する役割になっていたと思います。
テンポがあまりよくないので観ている最中はちょっと退屈に思うところもあるんだけれど、
観終わったあとに物足りなさがあるかといえば、ない。
妙に満ち足りた気分になる不思議。
ラストは魔法がとけたかのようにハッと現実に帰らされる感ハンパないです(笑)
冒険活劇的なものを期待してるとやや拍子抜けだと思います。っていうか私がそれ。


凄く映画自体に余裕がある。大人の映画です。
物凄い大金を投じ、物凄い技術を駆使したにも関わらず、
壮大な余白がある、鑑賞者に考える・想像させる余地がある、という良い意味でのアンバランス感がそう感じさせます。
ゴリゴリな作品かと思いきや、最終的には観客に委ねちゃうんだから凄いです。THE・大人の映画。
一見、あまり意味がないようにも思える+長すぎて間延びしているように感じるプロローグも、
全編を観たあとは、技アリだなぁ、と思わざるをえません。
全部繋がっているんです。


海のシーン以外はかなりナチュラルに撮っている(悪く言うと、地味)のもいいですよね。
あまりメリハリのある映画ではないので(むしろそれを避けている感じ)、
あまり目立ちませんがそのへんのコントラストが効いていました。
パイとリチャード・パーカーの物語は興味深く、おもしろかった。
肉食の島のくだりもとっても良かったです。
ふたりの別れのあっけなさは「ここで映画は終わりじゃないんだよ」と、こちらの胸の内を見透かされているようでした。
観ている側は、この映画のつくり手の手のひらでころころ〜っと転がされているわけです。
しみじみ大人の映画だよなぁと。
穏やかなエンドロールも作品の後味にぴったりでした。
日本人が出てくるのですが、典型的な洋画の日本人"風"(笑)


3DとCGが物凄いです。
これだけでもエンターテイメント映画としては十分、っていうくらい。
3Dのための映画だと思うし、3Dで観たほうがいいと思います。
初めて観た映画が3D効果を取って付けたような『SMTOWN LIVE 3D』だったので余計にそう思いました(笑)
あと、かなり今更ながら『ヒューゴの不思議な発明』を3Dで観なかったことを後悔。
2Dで観ながら、3Dのための映画だなぁ、と強く感じた作品だったので。
海に生きるクジラやトビウオなどのさまざまな生き物、
肉食の島でのミーアキャットをはじめとする島の描写などCGも本当に素晴らしかった。
個人的に3D映画にはあまり好意的ではなかったので本作の3Dの迫力とCGの美しさは衝撃的でもありました。


リアリティがどーの、ファンタジーがどーの、といった感じに議論が発展しそうな映画ですが、
そんなのは野暮だなぁ、と思うのはきっと観たらわかります。
でも『227日』っていうのはちょっとキツイかな(笑)