ミーハーでごめんね

ミーハーでごめんね

I AM LOWBROW, AND I'M SORRY.

ゲキ×シネ 髑髏城の七人

初・『ゲキ×シネ』。
こんなもんかぁ、っていうのが正直な感想。
やっぱり演劇を映像化したもので観劇と同じ感動を味わおうっていうのは難しい。
演劇はナマモノだから。


演劇って敷居が高くて、ましてや新感線なんてチケットがとれないし、とれても高額だし。
音楽ライブに比べたら観客数だってぐっと限られている。
一時期、縁あって、有名な役者さんたちが出演するお芝居をコンスタントに観賞できる機会に恵まれた時期があった。
その都度、心の底から思ったのは、限られたひとしか見られないっていうのが本当に本当に勿体ない、ということ。
私は演劇は詳しくないのでかなりミーハーな言い方になってしまうのですが、
テレビで演技してるあのひとも、このひとも、舞台の上では全然違う姿になる。
役者さんが持ってる"演技者"としてのパワーがぜんっっっぶ放出されるので、もう!もう!もう!もの凄い。
映像での演技を見て、たいしたことないわ〜、と思ってた役者さんからオーラが見えたりする。これはまじで。
もちろん、舞台を中心に活躍されている役者さんの演技を観ることのできる貴重な時間でもあります。


ということで、そんな"演劇"を"映画"というかたちに変えて、
より多くのひとに見てもらえるという、この『ゲキ×シネ』というプロジェクトは、
素晴らしいよなぁ、画期的だよなぁ、と思っていました。


"演劇"を"映画"として観る、っていうのは一長一短だなと感じました。
ライブビューイングや映画館で観るライブ映像とはちょっと満足感が違うんです。
"映画"として観てしまうと、どうしてもセットが簡素に見えてしまうのが気になったり。
ステージのスケールが感じられないから。
『ゲキ×シネ』というジャンルなんだと割り切らないと駄目ですね。
そのせいで序盤はあまり入り込むことができませんでした。徐々に慣れてくるわけですが。
良い点は、各シーン、一番いいアングルから見れること。
アップで細かい表情や汗まで確認できる。
\ここを見ろ!/っていうところを映してくれるのは有難いです。
これは実際に生で観劇していたら絶対に体験できないことですから。
演劇同様に休憩時間があるのにはびっくり(笑)ありがたい配慮です(笑)




初・劇団☆新感線、の、初・『髑髏城の七人』、だったわけですが、
こちらの作品は何度かキャストを変えて上演している有名な作品。
2004年には、古田新太主演の『アカドクロ』、市川染五郎主演の『アオドクロ』を上演し話題にもなりました。
本作はメインキャスト勢が若いことから『ワカドクロ』と呼ばれているとか。


ストーリーはちょっと物語を省略しすぎてる感。
終盤はとくにそこで区切っちゃうの!?という違和感がある場面も。
ラストもう〜〜〜〜んって感じで消化不良。
これは休憩時間の影響もあると思います。いや、なきゃないで辛いんですけどね。
生ではなく『ゲキ×シネ』だと後半の展開の早さが驚くほどに感じられる。
生の観劇だと、生の力であまり気にならないのだろうけれど(それが演劇の脚本の特徴のひとつだと思う)、
映像になってしまうと物足りなかったです。
長丁場を登場人物とともに駆け抜けるような感覚は、やっぱり生じゃないと得られないなぁと思いました。
演出も、あまり印象に残るようなところがなく。これまでの作品が気になるところです。
その分、分かりやすかった+キャストの渾身の演技でカバーできていたのでプラマイゼロなのかな。
出演者それぞれのケレン味たっぷりの『いのうえ歌舞伎』演技が楽しめたのでそれなりに満足っちゃ満足。
音響が良かったのか、役者さんの発する台詞がしっかりと臨場感や迫力が感じられたのがよかったです。
生とはまた違った印象ですが、これは映画館ならでは。




迷ってるなら絶対に観に行ったほうがいいです!!!
森山未來がえらいことになってるから!!!


天魔王を演じた森山未來がパネェ!!!森山未來無双!!!
彼はいつの間にこんなことになってたの…!!!
『いのうえ歌舞伎』のメイクが施されたその顔がスクリーンに映し出された瞬間、誰だかわからなかったです。
表情、しゃべり方、立ち居振る舞い。狂気。圧倒的怪演。
そしてダンス全般を身につけているだけあって信じられないくらい動けます。
その動きがなんかもう物凄い!怖い!恐るべき身体能力です。
そこにはいままでに見たことのない森山未來がいました。
舞台出身とはいえ全部が想像以上。でもって予測不可能。ゾクゾクしました。本当に怖かった。
彼の演技は凄いところにきてしまっていたんですね。
森山未來は演技に関しては死角ナシです。断言できます。
演技者として炸裂していました。
舞台での森山未來、もっともっと見てみたい!


早乙女太一も素晴らしかった!
無界屋蘭兵衛という複雑で繊細なキャラクターを演じきっていました。
普通に台詞を言うところはあやしいところもあったけれど、感情を高ぶらせるとこなど、要所要所で魅せる。
そしてなんですかあの色気。ハタチそこそこの男の子の色気じゃないですよ。妖艶すぎて!
そしてなんですかあの貫禄。ハタチそこそこの男の子の貫禄じゃないですよ。堂々すぎて!
殺陣の美しさは天下一品で、休憩中に太一くんのファンらしきマダムたちもそれについて熱弁していました。


気になったらとりあえずこれ見てみて!
森山未來と早乙女太一のシーンは凄すぎて凄すぎて凄すぎて!!!
あかーーーーーーーーーん!!!
観るまでは、特別料金かぁ…チッ、って感じでしたが、
ふたりの素晴らしい演技を観れただけで元がとれましたよ、安いくらい!!!
凄く特別な、ふたりだけの空間をつくりだしていたと思います。
もんのすっごいドキドキしたー!鳥肌ー!


主人公・捨之介を演じたのは小栗旬。
なのですが、やっぱり私は小栗旬の演技がかなーり苦手。
そして小栗旬の主役としての存在感の無さと演技力の乏しさにはかなりがっかりさせられました。
本作に至っては完全に森山未來と早乙女太一に喰われちゃってましたね…。
ストーリーに物足りなさを感じたのも、主役が主役の役割を果たしていなかったように感じたところが大きかったと思います。
それが脚本の問題なのか、演出の問題なのかはわかりませんが、
明らかに役者の力不足の問題なのだとしたら、何らかの方法でこれをカバーしないことにはどうしようもないのではと思いました。
主役の立ち位置がなんだかブレブレなんですよ。
そのせいで作品の全体的な印象としては弱いんです。
なるほど、これが『髑髏城の七人』か、なるほど、という感じなのですが、そのへんの説得力に欠けるのもそこが理由かなぁと。
ちょっと彼には荷が重かったですね。


勝地涼くんの舞台演技はそれこそ6年ぶりくらいに見たので成長しすぎてて、この6年で私は……みたいな気分にもなった(遠い目)
最近だと森山未來も出演した『北のカナリヤたち』にも出ていたけれど(小池栄子も)、
勝地くんは断然舞台ですね。
新感線の作品を見るのが初めての私がどうこう言えることではないのは百も承知なのですが、
『いのうえ歌舞伎』を一番体現していたのは勝地くんなのではないでしょうか。
ダイナミックでリズミカルな演技に、これが新感線の舞台か〜!、と思ったほど。


小池栄子・仲里依紗は演劇でも抜群ですね。
映像作品での演技も好きなふたりでしたが、舞台での演技もかなりハイレベルでびっくり。
小池栄子演じる極楽太夫と蘭兵衛のシーンはかなり泣けました。
彼女の役者としてのスッテプアップも凄いです。
強く、美しい極楽太夫をモノにしていたし、役柄もピッタリです。迫真の演技。
ただ仲里依紗の演じた沙霧の衣装がなんか安っぽくてな…ぺらっぺら…。
もうちょっとちゃんとした衣装を着せてあげておくれよん。


千葉哲也さんの演じた狸穴二郎衛門、演技は申し分なかったものの、もう少しキャラクターとしての強さが欲しかった。
裏切り三五を演じた河野まさとさんは新感線の方なんですね。
三五は笑いどころをたくさん提供してくれたキャラクターで和ませてくれました。
同じく新感線の高田聖子さんや粟根まことさんはさすが。
右近健一さんの演技も素敵でした。インディ高橋さんなんかも懐かしい。
新感線の役者さんたちが脇をがっちりと支えてくれていたおかげでメインキャスト勢も輝ける。
橋本じゅんさんがいなかったのがちょっと淋しかったですね。
そして私が演劇に縁あった時期とはメインキャストの世代がどかーんと変わっていて時の流れを感じます、しみじみ。




観劇と変わらない、と思ったのは体感時間です。
あっという間の三時間。
スピード感のある展開もさることながら、やっぱりキャストの舞台での演技に圧倒されっぱなし。
それに触れる機会に恵まれたことに感謝です。
もちろん、生でも観たい!、とも思いますが、近所の映画館でこれだけのものを観れる手軽さもまた贅沢。
次回作の『ゲキ×シネ』も是非観たいと思いました。


あ、これから観に行かれる方がいましたら、エンドロールのあとにカーテンコールがあるので要注意!