ミーハーでごめんね

ミーハーでごめんね

I AM LOWBROW, AND I'M SORRY.

グリーンブック

気がついたらアカデミー賞の作品賞受賞作品は観ておこう、という風になっていた。
そしてそうこうしていくうちに「アカデミー賞作品賞」を獲ったと聞けば、
その作品は「なぜ」「どうして」作品賞なのかということを、
"考えなければならない"ものなのではないか、という存在になっていた。
それ自体に対しては個人的にはそういう機会を与えてもらってる感もあり、
感謝しているくらい…なんですけどね。


でもね。単純に作品そのものを純粋にエンターテイメントとして楽しみたいときには、
その"考えなければならない"というのがひじょーに面倒臭いし、
"考えなければならない"と思って観たからには、
なにかを導き出さなければならないという気合いを要するのが面倒臭い。ときがある。
そしていまはそのときだったりするのです。




けれど観終わったいま、本作『グリーンブック』は、
そういうアレコレを抜きにしても、とてもいい映画でした。
面倒臭がって、今回は見送ろうかな〜とも思っていたけれど、本当に観てよかった。
戸田奈津子さんの日本語字幕作品、ずいぶんと久しぶりな気がします。




人間のあたたかさ。




それ自体は不器用なものだけれど、
それをとてもスマートに描いていて綺麗でした。


社会問題の部分は私の頭のなかで思うことを文章にするということはとても難しいのですが、
本作は黒人差別問題というデッカすぎるテーマがベースにありながらまったく説教臭くなく、
どこか軽やかにこなしている風に感じられて、単純にすごいな〜と思ってしまいます。
かといって全体的に、いたって直球で、刺すような鋭さ。




今作は史実である設定とか、
その設定が存在する画的な部分という意味での景色がもう出来過ぎなくらい出来過ぎで。
あまりにも素材が揃っているものだから、扱い方によってはザ・感動☆物語のようになりがちな作品だったのではとも思います。


観る前に「『最強のふたり』だった」という感想をたまたま見かけてしまいまして、
観る前にも関わらず、「わ、わかる~~」ってネタバレ食らったかのようなダメージもあり、
ますます観に行くのが億劫だったのですが、
あれですね、どちらかというと『トッケビ』
ウンタクのほう(?)じゃなくて、トッケビと死神の「ブロマンス」のほう!
ほほほ~~~~ブロマンス!、となりながら悶えて観ていました。
めちゃくちゃいいものを見ました。
ふたりのエピソードが深まるたびになぜか「私の推しカプ誇らしい」みたいな謎の気分に。
やっぱり何事も自分で触れてみないとわからないものですね。





主演のおふたり、すごく魅力的だったのですが、
ピアニストであるドクを演じたマハーシャラ・アリ様、めちゃくちゃ高貴でセクシーで、
それでいて繊細で、最高でした。


ヴィゴ・モーテンセン演じるトニーも、
ああ~~~~こういうオジサン、映画でよく見る〜みたいないかにもな人物なんですけど、
ふたりのビジュアルのコントラストが設定以上に鮮やかで、より一層作品が際立つ。


っていうか本作を手がけたピーター・ファレリー監督って、
『メリーに首ったけ』の監督さんてまじすか…!?なんかすごいんですけど!(ど偏見)




半ば義務感で観ているアカデミー賞作品賞受賞作品ですが、
本作『グリーンブック』はそういった冠がなかったとしても、観たあとだからこそ言える、
絶対に観たかった作品でした。


つくづく、「アカデミー賞作品賞」という冠がつくということは、
自分ではチョイスしないような作品に出会わせてくれる「機会」なんです。


去年の『シェイプ・オブ・ウォーター』はよかったですよね~。
映画を愛したひとの愛がつくった映画が作品賞受賞だなんて。
アカデミー賞側もエンターテイメント…というかアカデミー賞を通して各方面に言ってやりたいことが多すぎるのはわかるけれどもさ。
だんだんと、それにしても…という感じがあったから。
単純にエンタメ消費者としては息苦しさが増す一方という部分もあり。


でもね、今年は今年で、本当によかったんです!
『グリーンブック』、もっともっといろんなひとに勧めたいし、
なにより"勧めることができる"内容という点でも本当に完璧です。




そんなアカデミー賞の一連の"粋な計らい"のようなものを台無しにするかのような、
TOHOシネマズの値上げに対しては、ばかじゃないの?って感じ。


いま現在でも、利用してる片田舎のシネコンのラインナップは頭抱えるレベルなのに、
これじゃあますますいろんなひとが映画館に行かなくなるし、
映画というコンテンツとの距離が開く一方。
私はもっと自分が好きなものが"映画館で観たい"ので、
そういう環境になるにはと考えたときに、お金を出す側が観たいと思える対象が変化するしかないのではと思うけれど、もはやその余地もなくなりつつある。


私が映画館が好きな理由のひとつに美術館や演劇とはまったく比にならないレベルで、
安価で手軽に気軽に「表現」に触れられるというところがあって。
家でそういうのと向き合う集中力がないので、だから映画館という場所が好きなわけで。
だから私はこれからも映画館に行くけどさ~。




ひとつ。


私、昨年末に観た『来る』がすごく好きで、「平成最後に最高のクリスマス映画が爆誕だ!」っつってテンションぶち上がってたんですけど、
本作もたぶんホリデーシーズンの映画だよなぁと思うと正直、なにかを思わなくはない(笑)
でも、『来る』も『グリーンブック』も大好だもんで、逆に同時期に観ることにならなくてよかったなって思いました(笑)