めちゃくちゃ好きなやつだった。
「醜い」もの・ことに寄り添ってみたり、突き放したり。
そんなふうに人間の醜さを掌で転がして遊んでいるかのような映画だった。
そして、描かれる「醜い」を愛でる気持ちがある一方で、それを鼻で笑う自分の醜さよ。
だってこういうの、見たかったもん。
3人の女たちが誰も愛していない(ように見えた)のがほんとうによかった!
みんな他人なんかより自分を愛していて、自分がいちばん大事で大切で、
自分がいちばん気持ちよくなるために強くなってしまう人間の力と、醜さ!
("幸せになりたい"とかそんな大それたことではない。だって「いま」必死だから。)
全体的に「滑稽」がすごい。
美しい宮殿も悪趣味なほどのおめかしもうさぎも鳥撃ちなる優雅で残酷な暇つぶしも。
総じて、豪華であれば豪華であるほど、滑稽。
滑稽がすぎるくらい滑稽なのだけれど、
だからこそ登場する「人間」がすごく"血の通った「人間」"て感じがした。
バカみたいなシーンはたくさんあるんだけど、
そこに居る「人間」がすごく真剣に「人間」のかたちをしている。
そのコントラストが最高だった。
生きてる。我々はこのバカみたいな世界を必死で生きてる。
キャスト勢はエマ・ストーンしか存じ上げなかったのだけれど、
みなさま、演技というかもう顔そのものがすごかった。
すごく「人間」だった。すっ裸の「人間」だった。
エマ・ストーンといえば『ラ・ラ・ランド』のイメージくらいの認識だったんですけど、
ララランドじゃないエマ・ストーン、想像以上。
映像は洗練されていてすごくスタイリッシュ。
宮殿の広大さが強調される下からのアングルは内容と対をなすかのような超開放感。
夜の暗闇に灯されるロウソクの火もとてもいい。
音、宮殿の日常の音が蠢くように配置されていて、なかでも発砲の音が印象的だった。
フォントのつかい方もいちいちかっこよくて、センスいい~って感じ。
だけど個人的にはエンドクレジットはちょっと欲張ったなぁと(笑)
最後にタイトルどーんはめちゃくちゃよかった。
予告映像より、メインビジュアルのほうが映画そのものの雰囲気がよく出ている。
絶対にどうかしちゃうやつでしょ。
それにしても…なんですけど、
まぁ邦題(原題:『The Favourite』)は百歩譲って置いておいて、
キービジュアルはちゃんと踏襲してるのに配色で台無しにするジャパンの配給会社よ…
大奥がうんたらかんたらのコピーとか馬鹿なの?(悪口)
いやもうこれは映画館でレイトショーとかで観てこそではという感じ。
真っ昼間に家でとか絶対に見れない、自分が恥ずかしくなっちゃうと思う。
映画の雰囲気に酔いしれて、
気がつくと、高みの見物キメてる恍惚感…という自分のゲスさとのご対面である。
「サイテー!」「クソ!」とか言いながら爆笑してるのよ(伝わらない)
そののち、虚無。
でも、その虚無、悪くないんです。