ミーハーでごめんね

ヲタク気質のミーハーの忘備録。ネタバレ要注意。月別アーカイブを見られるようにしました。

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法

宣伝ビジュアルをいっさい裏切らない映像は、スタイリッシュで美しい。
けれど、思いのほか、その(映像の)ビジュアルに頼っておらず、そこは素直に感心した。



この内容で登場人物を人質にとったような作品にあるような後味にならなかったのは、
とにかく主人公母娘の娘である少女・ムーニーが心の底から「子供」を謳歌していたからだ。


私は幼少期にいつから"自分は子供である"という自意識を持ったかは覚えていないけれど、
「ムーニー」という少女はめちゃくちゃまっさらな「子供」だった。あれはすごい。
演じたのはベテラン(らしい)子役のブルックリン・キンバリー・プリンス、8歳。
へんな話、是枝裕和監督作品の"是枝演出によって映されるドキュメンタリーに限りなく近い「子供」"よりも、すっぴんの「子供」だった。


母親・ヘイリーを演じたブリア・ヴィネイトもすごくて、
絵に描いたような"子供がそのまま身体だけ大人になったような大人"を完璧に体現していた。
これまたびっくりなのが彼女は映画初出演というだけではなく、
「演技」というものをすること自体も初めてなのだそう。ひえ~!
ショーン・ベイカー監督がインスタグラムで彼女を見つけたのだそうで。時代だ。


本当に、この母娘に関してはちょっと"演技をしている"のが信じ難いほどで、
観終わったいまもそれは続いていて、きっと他の作品で演じているのを見るまでは、
彼女たちは私にとって「ムーニー」と「ヘイリー」以外の何者でもないのだと思う。
いや、まったくとんでもないキャスティングだった。


モーテルの管理人・ボビーを演じたウィレム・デフォーおじさまもめちゃくちゃよかった。
ボビーは正しく、厳しいけれど、そこにはあふれんばかりの愛があった。
とても優しい「大人」だった。




ヘイリーの"子供がそのまま身体だけ大人になったような大人"というキャラクターは本当に魅力的で、憧れみたいなものを少し抱いた。
憧れるがゆえに、そんなヘイリーに対して、マウントをとっている自分と直面しないといけないのがしんどかったりもした。


正直、撮りたいものを撮った映画作品であることはよくわかったけれど、
この映画の持つ「真意」みたいなものはよくわからなくて、
それがゆえに気がついたらヘイリーを上から見下ろしていた。


だってこちらは空調の効いた映画館で悠々と美しく映されている「それら」を見ている。
しょうがないよ、と自分をはげました。


だからといって、たとえ映画の持つ「真意」みたいなものがわかったとしても、
個人的にはまぁそこにはあまり興味がないけれども。
こちらが感じたことが私のなかではすべてだから。




映画は"ムーニーの視点"と、"母娘の幸せ"をとても大切に扱っており、
それらはとてもとても美しかった。
それが美しければ美しいほど、直面しなけれならない苦しいしんどさが襲いかかってくる。
そこには容赦はない。


だからこそ、あれだけしっかりと描いていたからこそ、
ラストのぼかし方は個人的には「演出」というよりは「逃げ」のように感じてしまった。
実際にムーニーは親友・ジャンシーと逃げた。


あそこで終わるのは、あんまりだと思った。
こちらに彼女たちの未来を少しでも祈ることができる余地を与えて欲しかった。
っていうか普通に映像のトラブルかと思ったんだけど。


私のなかで物語は宙ぶらりんのままだ。どうしてくれよう。