いやもう、めちゃくちゃびっくりした。
だって前篇と全然違ったよ!?
後篇は、鑑賞者もいっしょに霧の中を探りながら物語を辿るような感じがすごく良かった。
そういった点で、わかりやすくエンタメしていた前編とはまったくアプローチを変えてきたからびっくりしたけれど、
よりキャラクターの息吹を強く感じることができた。
初めて劇場で後篇のポスタービジュアルを見たときには、
前篇とまったくちがったコンセプチュアルなアプローチにびっくりしたのですが、
よくよく見ると菅田くんのカッコイイお顔はばっちり写ってるんですね(笑)
前後篇あわせて5時間超えの作品だけれど、
個人的にはイイ意味でそんなに長いとは思いませんでした。
これも"サクっと前篇を消化"できたことが結構でかい。あちらの作戦(なの?)勝ちです。
ボクシングのシーンはカメラワークなどをはじめとにかく凄かったし、
なんにせよ、キャストのファイトあふれまくりの闘いっぷりがもうもう凄い。
前篇では綺麗・格好良いもののつぎはぎ感のあったカットも、
後篇ではスムーズに繋がっていたように感じました。
静けさが際立っていて、物語のトーンに圧がかかっていて、
主人公ふたり・新宿新次(菅田将暉)とバリカン建二(ヤン・イクチュン)の内側が、
ことばやアクションも多くないのに炸裂していた。
ただ、ちょっと登場人物が多すぎの詰め込みすぎで、大渋滞していた(笑)
主人公ふたり以外の描写は結構大味なので、賑やかしに思えてしまった。
逆にいうと、これは新次とバリカンの、ふたりだけの物語だったような気がする。
だからこそ、他の登場人物は荒野にそれぞれに立つ、
とある名もなき人たちの例なのかもしれない。
これ必要かな?、と思ったとあるコミュニティの描写も、
かの荒野を生きる別の視点として在ったとしたらならば必要だったと思う。
片目(ユースケ・サンタマリア)の濡れ場はなんでやって感じだったけれど(笑)
キャストは前篇同様、皆が皆、すっごく良かったです。
菅田将暉演じる新次は後篇の出だし、すっかりチンピラ臭がなくなっていました。
"殺意を抱くアスリート"(なんじゃそりゃ)みたいな微妙なキャラクター像を、
しっかり「演技」というかたちにしていたのは凄い。
バリカンを演じたヤン・イクチュンは、
本当に最小限の絶妙な動きで、心や感情の動きを表現していました。凄い。
片目(ユースケ)はモロにユースケだなぁっていう感じが(笑)
うまいとか以前に、どうしてもそのまんまユースケすぎて。
魅力的なキャラクターだったけれど、『ぷっすま』とかのユースケがチラつく(笑)
大好きな中村まことさんもいい味出してて嬉しかった。
でんでんや高橋和也も好き~。
オーディションで役を勝ち取った、ザ・神出鬼没の山田裕貴、好きです。良かったです。
でも、どうしてもちょっと顔がかわいすぎた。
リングのうえで繋りたいからこそ憎まなくてはならなくて。
でもバリカンは新次を憎めない。
けれどきっとバリカンはあの瞬間、瞬間に新次と繋がることができて、
きっと幸せの絶頂だったんだよな。
そんなん泣くわ。
だからこそ、バリカンの最後の姿は見たくなかった。
幸せであった彼のラストを飾るカットは、むしろなくてもよかったくらい。
前篇から物語をグイグイひっぱっていた新次は、
ひとと繋がりたい意志という自我が生まれたバリカンとは対照的に、
どんどん「虚無」や「孤独」を象徴するかのような存在になっていく。
そのコントラストがとても良かった。
観終えた直後に、実際のスクリーンには表示されなかったけれど、
脳内のスクリーン(概念)にでかでかと『あゝ、荒野』って浮かび上がったんだよ。
確かに腑に落ちない点はいくつもあるけれど、
ラストのバリカンのモノローグ、新次の姿・目。忘れたくない。
エンドロール。
『BRAHMAN』による主題歌が沁みる。バカヤローって涙が出る。
そして、タイトルが自分の中に現れたことによって、
あゝ、すごい作品だったなぁ、と思うしかない。