ミーハーでごめんね

ミーハーでごめんね

I AM LOWBROW, AND I'M SORRY.

溺れるナイフ

原作未読、実写映画版の感想です。


イメージビジュアルが公開されたときは、
そのイノセントな雰囲気に強く惹かれて、絶対に観たい!、と思っていました。


だけど、予告映像を見て、そんなテンションは一気に下がってしまったのでした。
それはカリスマを持つふたりの少年少女キャラクターのビジュアルと、
演じる菅田将暉と小松菜奈ちゃんのシンクロ率が凄くて、そんなふたりが眩しすぎて。

ちょっとショックなくらいだったんです。
だから、距離を置こうかと思っていました。
けれど、それは痛烈に惹かれたのが理由だし、やっぱりどうしても気になってしまって。
重い腰を上げて観に行った次第であります。




で、観たわけなのですが……




少なくとも、予告映像で見た「コウちゃん」は、映画のなかにはいなかった。






…このヘタクソ!!!!!!!!






映画が!!!!!ヘタクソ!!!!!


「少女漫画の実写化」、の悪い例を見た気がする。原作知らないけど。
ロケーションを含め、これだけ素材が揃っていてこんなスカスカな映画が、撮れるんすねー。
学生とかのほうがもっとうまくやるんじゃないですかね。
なんなんだよあの大森靖子の挿入歌は!!!!!!!
逃げの要素の強いラストもちょっとあれはあんまりなのでは。。


スピード感はあるものの、あまりにも内容の流れがすっ飛んでいて、
ナツメ(小松菜奈)とコウちゃん(菅田将暉)がどうしてこんなに惹かれ合っているのかがまったく伝わってこない。
ドラマだから、映画のなかではたしかに惹かれ合っているのだけれど、だからこそそれがすごくサムく感じてしまいました。


テンポもちぐはぐで、狙ったちくはぐならいいものの、
明らかに力量不足のちくはぐで、このヘタクソー!、と何度心で叫んだことか。




ストーリーはキャッチーなものの、作品自体はすごくミーハーな感じ。
ただでさえ薄っぺらくなりがちな「芸能界」というものを扱っているのだから、もっとそのへんの配慮が欲しかったです。
菅田将暉に、小松菜奈ちゃんに、こんなミーハーは似合わないと思いました。
ふたりの持ち味ぶち壊しですよ。


仮に本作が原作になぞったストーリーをなぞった結果がこのありさまになったのなら、
もっと映画オリジナルの要素(もちろん引き算を含む)を入れてもよかったのではと。
そのほうが作品としての可能性が広がったのではないかと。




タイトルバックのモノローグや、歌モノ以外のジャカジャカした音楽は、
作品の質感とマッチしていて気持ち良かったです。


とおーーーーく俯瞰で撮られていたカットもおもしろいと思いました。
細長い小松菜奈ちゃんが、しっかりと身体の動きだけで心情を露わにしているのは良かった。




キャストは良かったと思います。


とくに重岡大毅くん!!!!!、の演技はめちゃくちゃよかったです。
"『ジャニーズWEST』の重岡大毅"は寸分も見せず、ただただ「大友」という明るくて優しい青年がスクリーンにいました。
アドリブなのかよくわからないシーンもたくさんあって、そのたびに小松菜奈ちゃんが本当に楽しそうにしている姿は見ていてとてもほっこりしました。
重岡くんの"俳優としてのすごさ"はしっかりと伝わってきました。


だけど、私は菅田将暉の"俳優としてのすごさ"も感じたかったんです。
本作は菅田将暉の無駄遣い極まりなかった。
彼自身の演技はいつものえげつなさ全開の素晴らしい演技でした。


でも、"菅田将暉の「コウちゃん」"はもっと凄いはずなんだよ。


だって「コウちゃん」ってそういう存在なんじゃないの?
映画からはコウちゃんのカリスマとかまったく伝わってこなかった。
予告映像の「コウちゃん」という存在が強くつき刺さっていた私は、そんなコウちゃんが悲しかった。
あの予告映像の鮮烈なコウちゃんは、私にとっては映画のなかのコウちゃんではなかった。


小松菜奈ちゃんのヘタクソ演技は映画のヘタクソ具合と同調しちゃってて、
小慣れてない演技が評価されていると思い込んでいる私個人の感想としては、
本作では普通にヘタクソだなぁと思ってしまいました。
雰囲気のある女優さんだと思うから余計に残念。
でも、たどたどしいながらにコウちゃんに叫ぶかのように想いを伝える姿は真に迫るものがありました。


上白石萌音ちゃんはうまいのだけれど、このミーハー映画だと演技のうまさが勿体なく感じました。
でもカナちゃんのうざったい感じはよく伝わってきて良かったです。
『ドレスコーズ』の志磨遼平さん、あの風貌はもうこの作品のミーハーの極みというか。。
なんつーか、アーティストっていうよりアイドルみを感じてしまって私はだめでした。。
それにしても市川実和子が母親役だなんてびっくりですよ。時代の流れを感じる。




予告映像を見て、こんなにざわざわさせられたのは久しぶりです。
が、本編を観て、こんなにがっかりさせられたのも久しぶりです。


私ですらその存在を知っていた人気漫画『溺れるナイフ』の実写映画化は、
ファンの方にこそ賛否両論ありそうですね。
個人的には、いい勉強になりました。