ミーハーでごめんね

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I AM LOWBROW, AND I'M SORRY.

映画「ピンクとグレー」を観たあとに小説「ピンクとグレー」を読んだ

ある日、ふと図書館に立ち寄り、ふと目に入った小説『蛇にピアス』を手に取った。
一時間足らずくらいであっという間に読み終えてしまった。
そして実写映画も観たいな~なんて思っていたらすぐに見ることができた。


実写化するって本当に難しい。
原作と異なったのは、本当に、終盤のちょっとした脚色ぐらいだったから。
それだけ原作に忠実に再現していても、文章と映像だとまるで違う。


あと、映像化したのが蜷川幸雄という、年配男性だったのも大きいのかなぁ。
まぁ性別・年齢に関わらずかもしれないけれど。
原作はあの金原ひとみによるもので、かつ、文章は若い女の子の語りで綴られているわけで。
その視点が急に変わってしまうんだもんなー。難しいなー。
高良健吾くんのキュートなお尻をしっかり映してくれたのは評価します♡






※以下、『ピンクとグレー』のネタバレ要注意!






先日、映画『ピンクとグレー』を観た。



映画は映画としてはちゃんと楽しめた。
いつもと違うのは、いろんな方の感想を読むにつれ、原作にも興味を持ちはじめたこと。
"実写化されたものを観たから"、という理由だけではそこまで原作に惹かれるわけではない。
いつもと違う点は、原作者が「アイドル」という点。


映画の原作となった"「アイドル」が執筆した小説"はどういうものなのだろう。


動機は単純だった。


『ピンクとグレー』の原作小説は日本が誇るアイドル帝国・ジャニーズ事務所『NEWS』の加藤シゲアキくんによって書かれたもの。
それが、どうやって映像化されたのか、知りたかった。


で、映画を観てから約一ヶ月後、原作小説を読んだ。




ぜんぜんちがう。




まず、"「アイドル」が執筆した小説"とは思えないクオリティに驚いた。
読んでいる最中は作者がアイドルであることは忘れていた。


そして、


映画版は"りばちゃんの物語"だった。
原作版は"りばちゃんとごっちの物語"だった。


いまでは主人公がひとりに変えられた映画版は、まるで企画ありきのもののようだった印象を受ける。
設定だけ引き取って書き換えられたような脚本だったな、と。


かといって行定勲監督が手掛けた"「実写化」が悪かった"とは思わない。
映画版はとってもわかりやすく、キャッチーで、エンターテイメント性が高かった。
ストーリーが大きく転換する例の場面では、静けさを纏う原作版と異なり、イイ意味で派手だった。




けれど、結果的には先に世に出ている原作版に肩入れしてしまうことになった。




たとえば、あだ名。
私は映画版で、主人公が「りばちゃん」というあだ名で呼ばれたとき、かなりびっくりした。
苗字に「河」があるから「リバー」?で、「りばちゃん」?っていうのはわかるんだけど、
なんだか取ってつけたような感じがして、違和感があった。
そう思っていたら、原作版では「りばちゃん」のあだ名の由来のひとつにはかのリバー・フェニックスもかかっていると記されていた。
さらに掘り下げると、それは『スタンド・バイ・ミー』に繋がり、一気に主人公たちの青春時代のルーツまで見えてくるのだ。


また、「デュポン」の存在も物語を息吹を与えていたと思う。
映画版ではライターとでしかその存在意義のなかったフレーズが、原作版では要所に現れる「柱」の愛称として多々、登場する。


それらからは、加藤シゲアキが描く"青春のシンボル"のようなものが現れていた。
そういったものがたくさんちりばめられていた。
映画版は、それらを排していたように感じる。勿体ない、と思ってしまった。
きっと固有名詞の名前を出すと、いろいろと面倒くさいのだろう。大人の事情。


「芸能界」を演出すべく大きく脚色された映画版とは異なり、
原作版では、「芸能界」が舞台の一部であるものの、人間臭さを損なうことなくしっかりと登場人物の物語が描かれていたのも好印象だった。




原作版・映画版、どちらにも言えることといえば、"ごっちのお姉さんの在り方"が物語において不安定であること。
ごっちが最期を迎える理由にもなるそれが、どちらもうまく機能していないように感じた。
映画版ではもろに「???」だったけれど、原作版でもまだ描き方が甘かったように思う。
そういう点を含めても、ごっちから語られるエピソードがあるぶん原作版を支持してしまう。


また、どちらも、りばちゃんとごっち、ふたりの「関係」が「設定」より薄く感じられた。
映画版はそれをストーリーの振り方に利用していたけれど。




冒頭の話にも戻るけれど、"原作に忠実なら実写化は成功"というわけではない。
原作と異なっていても素晴らしい実写化作品はたくさんある。


実写化するって本当に難しい。(二回目)
文章がいかに想像力を掻き立てるものなのか、映像がいかに雄弁なのか、考えさせられる。
そして、ある程度の興行収入を得るためには、それなりに"変えていかないと"という例を見せつけられたような気がする。




私が読んだ『ピンクとグレー』は文庫本版。
それには著者・加藤シゲアキのあとがきとインタビューが最後に載っている。
りばちゃんでもなくごっちでもない、彼から語られることばこそが『ピンクとグレー』というパラレルワールドの入口なのかもしれない。