ミーハーでごめんね

ミーハーでごめんね

I AM LOWBROW, AND I'M SORRY.

アンコール!!

ざっくり言うと、"高齢版"『天使にラブ・ソングを』。
けれど"劣化版"でもあります。


描いていることは美しいし、わかりやすいストーリーも悪くないです。
なのですが、作品としては弱い。
"歌"を扱った作品ならばそれに絡んだところでそれなりの感嘆する部分があると思うのですが、それがない。
物語の状況は、とても他人事とは思えず、楽しく観るべきシーンもどこか哀愁を感じてしまいました。


『天使にラブ・ソングを』と大きく違うのは、
メインが"歌唱シーン"ではなく"人間ドラマ"であるということ。
あくまで歌唱シーンは人間ドラマに添えられた華なんですよね。
だから歌唱に関してはそれ自体にドラマ(成長する過程など)はほとんどない。
じゃあ、"人間ドラマ"としてはどうだったのか。
物語は、素敵だなぁ、と思うところもあるのですが、いまいちパンチがない。
テンポの単調さや無理矢理な展開もろもろ、その原因は見てとれます。


主人公夫婦、夫・アーサー&妻・マリオンの関係ややりとりは微笑ましく、儚く、
思わず涙が………出ませんでした…。
「感動させてやる!」っていう制作側の鼻息の荒さが感じられてしまって。
明らかに他のシーンより力が入っていたので。
ただ、このココを重点的に描いたことで、物語のなかでマリオンの存在が生き続けるんです。
そのへんのバランスのとり方の影響なのか、作品の印象はややぼやけ気味。
安易なお涙頂戴作品になるか・ならないか、の微妙なところです。
もう少し振りきってほしかった。


主人公夫婦の家族・歌の先生以外のキャラクターがまったく立っていないのが悪く作用している気がします。
「仲間」や「友達」が、まるでエキストラのように感じられてしまい、
和気あいあいとした雰囲気や歌唱にもリアリティがありませんでした。


全体的に、キャストの演技力に支えられていたと思います。
知っている役者さんはひとりもいませんでしたが、それぞれに"生きる"ということを体現していました。
なんだかキラキラしていて眩しかった。


ラストシーンは『ファミリー・ツリー』のそれを思い出しました。
良いラストだったと思います。