ミーハーでごめんね

ミーハーでごめんね

I AM LOWBROW, AND I'M SORRY.

奇跡のリンゴ

映画が何を伝えたかったのか、は、ハッキリとわかる作品でした。
でも今回は私の求めていたものとは違ったんです。
でも、それは"作品"としての話。
個人的には今の私に響くところもたくさんあり、それなりに楽しむことができました。
なにより、いま頑張っているひとやこれから頑張っていこうとしているひとには
とても勇気づけられる話だったのではないかと。


観やすい。
演出なども最小限に絞ってあります。
ただそれもちょっと私には物足りないところでもありました。
その代わり、役者の力量が丸見えになりますが、そこはみなさん達者な方ばかりだったので無問題。
もう少し繊細な演出が施されたシーンも観てみたかったです。


無農薬りんご栽培へのきっかけが「妻が農薬に苦しんでいるので」というストレートな理由なのが良いです。
そこから主人公・秋則(阿部サダヲ)がもともと持っていた好奇心旺盛な性格の影響でどんどんのめりこんでいくという。
その過程が、ただの秋則の意地のように感じられてしまったのは残念。もう少しツッコんで描いて欲しかった。
作品で語られている何倍も、壮絶だったのではというのは容易に想像がつきます。
その点を考えるとリアリティが少し足りなかった気もしますが、
そのへんはあまりやりすぎてもただの武勇伝もどきになってしまう恐れもあるのでこのくらいでよかったのかもしれません。


陽気な雰囲気からシリアスな展開になっていくところは引き込まれましたが、
どうにもこうにも先が読めているのでそこまで熱心に観ることができず。
個人的には、今作のりんご栽培に沿った"温かく、優しいメッセージ"の続きとして、
もっと、その後のサクセスストーリー的なものも描いてくれたら作品に勢いが感じられたのではと思いました。
もの凄いことに挑戦しているにも関わらず、内輪で完結しているスケールの小ささが惜しいなぁと。
結果的に"ほっこり"で終わらせるにはちょっと勿体ない気がするんですよね。
でもそれがこの映画の嫌みのなさの理由のひとつなのかもしれません。


キャスティングは良かったです。
阿部サダヲの演技は安定感があります。
しっかりと自分に求められている演技をわかっているのかいないのか、とても人間味にあふれる演技がいつも素敵。
菅野美穂は今回ナレーションも担当とのことで、これが凄く良かった!
優しく、見守りつつ、包み込むような感じ。
演技もそんな風で、初めて彼女の演技を良いと思えたかもしれません。
義父役の山崎努はさすがの貫禄。けれど決して前に出すぎることもなく、そのへんがさすがといったところ。
締めるところは締めてくれる安定感。


事実となにがどこが違うのか元になった本も気になります。
機会があったらそちらも読んでみたいです。