ミーハーでごめんね

ヲタク気質のミーハーの忘備録。ネタバレ要注意。月別アーカイブを見られるようにしました。

ヒッチコック

ストレートに"大人の映画"だったのでまだまだお子様な私にはあまり響かず。


ストーリーや演出など、明らかに映画として、とても良い作品なので、
しっかりと受け取れなかった自分に少しがっかり。
なにより私自身がヒッチコックのことを全然知らないうえに
『サイコ』という作品がヒッチコックの代表作であることすら知らずに観ていたのも大きい。
その辺りの情報を把握していたひととはまったく受け取った印象が違ったと思います。
でも、本作はそういった私のような何も予備知識がない相手を満足させるにはパワーが足りなかったかなと。
全体的にはちょっと退屈してしまいました。


わかりやすくいってしまうと、"ヒッチコックの代表作『サイコ』の制作秘話・裏側"。
その背景では『サイコ』に負けず劣らずな物語が繰り広げられていたという。
夫婦として・男と女としての関係、そこから生まれる愛憎など、
ヒッチコックとその妻・アルマとの間での出来事、登場人物の心境を細やかに描いています。
単純に"夫婦もの"としても濃厚。


それらと、ヒッチコックの映画制作への情熱を織り交ぜながらストーリーは軽やかに進みます。
なのだけれど、その部分が、"情熱"というよりも、クリエイターとしての"プライド"のほうが前面に出ていたように感じられてしまい、
そうなってくると、なんだかヒッチコックがあまり格好良く見えてこない。
でも本作はそういったヒッチコックの姿を示すこともコンセプトだったように思います。
そういう意味ではまんまと罠にはまったのかな。
ヒッチコックのアルマに対するいろんな意味での"嫉妬心"なども個人的にはとくに異常という風には感じず、
それらは多くの人間が持つものだと思いました。
彼もただの人間・男なのです。
ヒッチコックが抱えていたであろう悩みや葛藤も私にはあまり伝わってこず。
けれど、その答えは簡単で、実は本作は"アルマの物語"だったからなのかもしれません。


序盤はテンポも良く、ヒッチコックの才能を心から信頼し、彼のよき理解者・相談者であったアルマとのやりとりは、
豪快かつ痛快でおもしろかったです。
夫婦関係以外にも映画を公開するにあたって、当時はいろいろな戦いがあったのだなぁと。


結局、アルマの仕上げによって『サイコ』はヒット作になったことも含め、
なんだかんだ「ヒッチコック作品を支えたのは妻のおかげです」、な展開がありきたりのように感じられてしまい、
それはまぎれもない事実なのですが、もうひと工夫欲しかったところ。
例えば、(私にはわかりませんが)ヒッチコック作品へのオマージュのような演出がなされていたのなら、
それに(私が)気付けないくらいには作品としては地味めだったように思います。
終盤は展開的にもややあっけないように感じました。


最初と最後のヒッチコックの茶目っ気たっぷりの自分語りが素敵なスパイス。
ヒッチコックの精神状態を表すシーン(プールの掃除、深夜の暴食など)はややファンタジックに描かれており、
印象的・象徴的で良かったと思いました。
それに反するかのようにアルマと友人・ウィットと彼の海辺の小屋のデッキでの共同執筆のシーンの
解放感と爽やかさのコントラストが鮮やかで良かった。
アルマの秘めた女心。
ウィットにはチラチラと女の顔を見せつつ、
ヒッチコックが倒れた際には彼の代わりに現場の指揮をとるデキる女っぷりが清々しかったです。


ヒッチコックを演じたアンソニー・ホプキンスは、まず特殊メイクが凄い。
私はヒッチコックがどんな人物かは知らないのですが、あの横を向いた全身のシルエットは知っています。
演技も含め、アンソニー・ホプキンスだということがわからないほどにはヒッチコックを体現していたのではないでしょうか。
『サイコ』上映最中に観客席を覗き、その様子に全身で幸せや喜びを表す姿は
それまでの劇中のヒッチコックからは想像のできないような素直さや無邪気さがあふれていてたまらない気持ちになりました。
アルマを演じたヘレン・ミレンが凄く良かった!
自然に歳をとっていて、なお年月・経験相応に美しく、凛々しく。
こんな女優さん、アンチエイジング崇拝の日本にはなかなかいないでしょう。
(パッと思い浮かぶところだと富司純子くらいかな?)
ヒッチコックに浮気を疑われ、責めたてられたときに、
それらを物凄い迫力と剣幕で一蹴したシーンは凄みがあって格好良かった〜!
そういったシーンからでさえも、アルマの知的・聡明であることが垣間見える素晴らしい演技でした。
スカーレット・ヨハンソンはちょっと存在感が薄かったかな。


観た直後はあまりなにかが残るという感じがしないのですが、後からじわじわくる映画です。
もう少し大人になってからまた観れたらいいな。