ミーハーでごめんね

ヲタク気質のミーハーの忘備録。ネタバレ要注意。月別アーカイブを見られるようにしました。

アルゴ

今年のアカデミー賞で作品賞を受賞とのことでアンコール上映されていたところを鑑賞。
『アルゴ』という題名、シンボリックでとっても良いと思います。


おもしろかった!!!
…んだけど、これが「今年のオスカー作品」、っていうとちょっと弱い。
パンチが足りない。遊びが足りない。
確かにおもしろいんだけど、"エンターテイメント映画"を逸してない気がする。
根っこからぐわっと観客を巻き込むような勢いがあったら良かったのになと。
全体的に上っ面しか描かれていないので、ちょっと物足りない。
緊迫感のある演出・カメラワークは素晴らしかったです。
登場人物の表情をダイレクトに映し出すことで、あらゆるやりとりでの緊張感がひしひしと伝わってきました。


つくり手の本気がしっかりと伝わってきた作品。
監督・ベン・アフレック、凄い!
手抜き感もなく、よくつくられてると思います。
実話をベースにしているだけあって臨場感もよく表れてる。
っていうかこれが実話って!!!本当に凄い!!!


イランやカナダとアメリカの関係にもっと踏み込んで描けていたら作品の深みが増したと思います。
"国際問題"であることをもっと挟んで欲しかった。
救出劇自体はひっそりと遂行しなければならないことなんだけれど、映画に壮大さがあったらもっと作品に箔がつくのに、と。
スケールが小さいように感じました。


とはいえ最後のイラン空港からの脱出劇は相当なスリルを味わえます。
飛行機搭乗まであと一歩のところ、本能で気が急いてしまうような場面を臨機応変に切り抜けたところなんかはたまらんかったですね。
でも滑走路であれだけ近距離で追われて止まらない飛行機ってアリなんでしょうか(笑)


偽映画『アルゴ』の華やかな制作発表パーティー様子とイランでの緊迫した様子を繋げた部分は対比が鮮やかでとても良かった。
このような、ただの救出劇に終わらせない工夫がもっと随所に欲しかったです。
あと、物語が進むにつれ、焦点が"救出"に絞られていくわけですが、それがなんだか短絡的。
カナダ大使の公邸から救出される6人を映す際に、あまりその外の世界の様子を映さないのでリアリティに欠けていたようにも。
救出にかける準備がぽんぽんと事がうまく運びすぎていたのも理由のひとつかと。
ストーリーはスムーズに進むんだけれど、なんだか軽やかすぎて。
もう少し尺が長くなってもいいので紆余曲折や苦悩をじっくりと描いて欲しかったです。
『アルゴ』という偽映画の宣伝をアメリカでしたものの、各所でのその反応が描かれていないのでイマイチ現実味がなかったり、
そのへんのやりっぱなし感も気になりました。


6人を救出すべく奔走するベン・アフレック演じるCIAのトニーと救出される6人との信頼関係もあまり描けていません。
ギリギリまでトニーの計画に不信感を抱いていた夫婦の心情は、それはそれで納得できたのですが、
この突拍子もない救出劇をすんなり受け入れるのには相当な覚悟が必要だし、
脱出したいという強い想いなど、心の中で並々ならぬ駆け引きや葛藤があったはず。
そのへんがなんだかアンニュイな雰囲気に覆われていて、ん?、となってしまいました。
トニーが冷静かつ感情を表に出さないタイプだったこと、6人がすでに疲弊していたことを考えると、
実際もこんな感じだったのかなぁ、とも思わないわけではないのですが。


6人の救出作戦を描いたものだけれど、
襲撃されたアメリカ大使館に残され、人質となった大勢のひとたちのことがスコーンと抜けているのも腑に落ちない。
結果的にそれらのひとたちも全員解放されたので無問題だけれど、仮に6人だけ救出したことが引き金となり、
イランに残された人質が更なる危険にさらされるのではなどということは考えたりはしなかったのだろうか。
そのへんは「事実を基にしているので。」、追求することじゃないということはわかっているんだけれど。


国家規模の救出劇だったにも関わらず、
ラストはトニーの個人的なドラマで締めくくるというナチュラル感が素敵でした。
映画と、実際の6人の容姿や当時のイランの様子との比較もあり、
この嘘のような救出劇が本当だったということをこちらに刻み込ませます。


イラン側に映画撮影計画を説明する際には、険しい顔、疑わしい視線が常のイラン人も皆揃って顔をほころばせるんです。
エンタメのパワーを垣間見て何故か私もちょっと嬉しくなりました。
だけれども。
SF映画『アルゴ』、もし実際に制作されたとしたら、盛大に大コケしそうな予感です(笑)