ミーハーでごめんね

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I AM LOWBROW, AND I'M SORRY.

会田誠展:天才でごめんなさい

有名作家であるにも関わらず、作風の影響からスポンサーがつき難いとのことで、
いま、このタイミングで美術館での初・個展の開催となりました、会田誠。
すでに話題性じゅうぶんです。


導入はやや地味だったものの、観進めるうちにどんどん広がる作品のバリエーションが
作家の視点・視野を疑似体験できるかのようで、見ごたえのある個展でした。
抑揚のあるカラフルな構成も良かった。
各展示室の高低差ありすぎて耳キーンなるわ!(by フットボールアワー後藤)
なかでも巨大絵画のみを扱った展示室は圧巻。大きい〜!
平面が強い、貴重な現代アート作家です。
会田ファンにはこれまでの会田作品を補完できるであろうお腹いっぱいの展示だったのでは。


いままでさまざまな媒体で見てきた作品を生で観れた感動!
現在も美術館閉館後に制作が続けられている『ジャンブル・オブ・100フラワーズ』は
最新作にして最高傑作なのではないでしょうか。
賛否両論あるとは思いますが、会田誠の描く線の美しさは有無を言わせぬ説得力があります。
単純に、絵がとっても綺麗。
そういうもののなかに目を背けたくなるような要素があって嫌でも惹きつけられてしまう。
とってもキャッチー。インパクト大。
伝統的なジャンルをも圧倒的な画力とアイディアでもって会田誠的作品にしてしまうのは痛快。
ただ、そういった作品はほとんどがどこかで見たことのあるものだったので、
作品自体を目の前にして初めて得る衝撃というものはなかったかな。
そのような作品があり、作家が評価されているからこそ別途価値がつくような作品もたくさんあって、
アーティスト(に限った話ではないですが)って、あらゆる点でタイミング次第だなぁ…、と実感させられたりも。
攻撃的な作品も、会田さん自らが添えている解説・コメントが親しみやすさ全開でとっつきやすいです。




このひとは戦っている。




そう思いました。
でも合気道みたいな戦い方。称賛も批判も全部自身への追い風にしてしまう。
そして、"戦う"作家は他にもたくさんたくさんいるのですが、
会田誠の場合は、それを意図としているのか・いないのか、が曖昧なんです。
作品自体は一見凄く攻めてるんだけれど、受け身と紙一重な印象も受ける。イコール自然体。
派手に爆発する、というよりは水面下でゆらゆらと静かに燃えているようで、
そういったところも作品そのものの雰囲気との差が感じられます。
それは制作スタイルにもいえることで、
孤高の天才タイプかと思いきや、大勢のひとたちとの共作も想像以上に多く、
アートをムーブメントとしてシェアしようとする姿勢が意外でした。
そのようにコミュニケーションを図ろうと見え隠れする意思と、
作品が放つ過激さ・強烈さとのギャップが物凄くてかなりヘトヘトになりました。


会田さんの作品といえば、"美少女"ですが、
描かれる美少女たちは絵のなかでとんでもないことになっているにも関わらず
それぞれの世界から出てくる気配はなく、みんな居心地良さそうに作品に収まっています。
だからリアリティはない。
そのリアリティのなさが、観賞者になにか訴えているの…か…な……?
そういうところも煙に巻かれている気がして、綺麗に、丁寧に描かれている作品に反して薄気味悪いのです。


結果、私は人として会田誠が好きです。
優しそうだし。(関係ない)




ひょんなことがきっかけで会期中に会田誠の作品に興味を持った母。
そんな母を初めて東京の美術館に案内しました。
親子で見た展望台からの景色は、なんだかいつもと違ったように感じました。