ミーハーでごめんね

ミーハーでごめんね

I AM LOWBROW, AND I'M SORRY.

ムーンライズ・キングダム

か!わ!い!い!
しかし、かわいいだけじゃない、ピリッとスパイスのきいた良い映画でした。
こういう自分を豊かにしてくれるような映画は好きです。
ぼんやりした"かわいい"ではなくて、計算しつくされた"かわいい"なので小気味いいです。
かわいい、で全部解決できてしまいそうな、強い作品でもあります。


いとおしい。
凄く、きゅーーーんとします。


世界観はガッチガチ。
この世界観が、好きか、嫌いかで、感想がばっくり分かれると思います。
退屈なひとにはとことん退屈でしょうね。
ストーリーや展開はかなり弱いのですが、有無を言わせぬ作品としての堂々たる存在感と完成度で
しっかりとひとつの作品が成り立っています。


どこか懐かしい感じがあるものの、リアリティのある懐かしさではなく、あくまでもファンタジック。
登場人物が目に見える喜怒哀楽を最小限に抑えているのも大きい。
そのせいか映画全体はかなりアンニュイな雰囲気になっているのですが、
それが作品が発信するメッセージを貫くことの手伝いになっていたり、この映画の個性になっています。


子供の世界や考えていることってこんな感じよね、と。
大人がくだらないと思うことだって、当の子供は大真面目。
それが、じんわりと伝わってくる。
だからといって、まんま"子供の世界"を描いたわけではなく、ウェス・アンダーソン監督流の表現でもって描かれている。
余計な愛想を排したことで、子供にしかわからないシビアな世界を見せつけてくる。
主人公・サムとスージーの手紙でのやりとりの回想シーンだけ集中してリアリティのある描写になっているので
それ以外のシーンのリアリティを排しても妙な生々しさがある。綿密に練られているのです。


単館系のニオイがぷんぷんする映画なので、全国公開してくれて有難い。
ブルース・ウィリスやエドワード・ノートン、ビル・マーレイなど、名だたる俳優がひょっこり出演しています。
映画に凄〜く自然に溶け込んでいてそれにも少しびっくり。


笑いもふんだんにちりばめられています。
上映中、「フフッ」と品の良い静かな笑い声がそこかしこから聞えてきました。
ラストもとっても素敵です。


まるっとレトロポップなテイストがかわいい。
外国のガーリッシュな絵本を見ているかのようでした。ストーリーも絵本のようだし。
自分のなかに眠る乙女心をおおいに刺激されるというか。
衣装、小道具、セット、ロケーション…どこを取っても本当にかわいいです。
色づかいやそのバランスからも、ただならぬこだわりが感じられます。
望遠鏡や虫のピアスなど、物語にちりばめられたキーアイテムも光っています。
スージーのアイメイクもインパクト大。鮮やかなブルーのアイシャドウと太いアイラインが深い瞳をより印象的に際立たせます。
ボーイスカウトというシチュエーションはフル活用。画的にも良いですよね。
カメラワークも絶妙。寄り・引きのメリハリ、パノラマな映し方もおもしろかった。
エンドロールのフォントやフォントの動かし方、加えてBGMまでもとことん凝っています。
ぬかりないです。


徹底的にセンスが良くて、いろいろと勉強にもなりました。
ショートフィルムやミュージックビデオ、CMなど、尺の短い映像作品にも応用できそうなテクニックが満載。逆もしかりですが。
そういった意味でも観ていて楽しかったです。
最近のK-POPのMVだと(唐突にK-POPで申し訳ない!)Orange Caramelの『Lipstick』
HELLOVENUSの『今日何してる?』とかが好きなひとは好きなんじゃないかな。
(どちらも映像制作チーム『DIGIPEDI』制作の作品です)


あまり映画をたくさん観ているわけではないですが、
いままで観た、個人的かわいくてお洒落な映画ランキングではかなりの上位。
チラシのビジュアルが、"かわいいアンテナ"に引っ掛かった方にはおすすめ。
絶対に、期待よりもかわいいですから。