ミーハーでごめんね

ミーハーでごめんね

I AM LOWBROW, AND I'M SORRY.

奈良美智:君や僕にちょっと似ている NARA Yoshitomo:a bit like you...

いろいろな意味で今後の展開が気になっていたアーティストのひとり・奈良美智。
奈良さんの個展は2004年に原美術館で開催された『From the Depth of My Drawer』展以来の観賞。
当時は奈良さんのことを"可愛い女の子の絵を描くひと"というイメージしかなく、
展示も、ただただ立体がものすごく可愛かった、という感想が思い出されます。


普通に生活していれば目や耳に入ってくる奈良さんの作品や制作活動。
今年は24時間テレビの"チャリTシャツ"のデザインにも関わったとのことでテレビで見る機会も。
だれにでもわかりやすく可愛い、あまりよくわからなくても可愛い、というのは大きな強みです。


けれど今回の展示は、可愛いだけじゃない、ということがしっかり示せた展示だったのではと思います。


美術館のエントランスでは『White Ghost』という名の巨大な白い像がお出迎え。
一気に奈良美智の世界へ。
つかみはばっちりです。


展示室の入口に一歩入り、びっくり。
圧倒的なブロンズ像の点在する空間は衝撃的でした。
ああ、このひとは新しいステージへ進んだんだ、と確信。
それぞれのブロンズ像は同じ立体作品とはいえ、
2004年に見た可愛いだけのツルッとした作品とは全然違うものでした。
すごく人間くさい。
生命体としての厚みがあって哀愁があって野暮ったくて。
でも可愛い。
作品の大きさは、ただ迫力がある、というよりは、こちらに寄り添うような包容力がありました。
この空間をしっかりと覚えておきたい、と思い、かなり長いあいだこの展示室にいました。
幸い、全体の展示点数が多くなかったので最後の出口を出ては最初の入り口に戻ってを繰り返し。
この展示だけで来て良かったなぁと思いました。


あとはおなじみのドローイングやgrafと共作のインスタレーション(だよね?)も。


そして展示の合間合間に現れる巨大なキャンバスに描かれた少女たち。
明らかに瞳の描き方が進化していて吸い込まれそう。
造形は単純なのにアウトラインの描き方が絶妙で無視できない、独特な存在感を放っていました。
あっ、見つかった!、み、見られてる!、そんな感じ。
なかでも細い通路の奥にあった作品は印象的、遠くからでも、やっぱり視線を感じる。
"鉢合わせする"という感じでしょうか。


作品点数は、コレクション展と合わせてちょうどいいかなという感じ。
横浜美術館といえば、コレクション展が毎度充実してる印象があるのですが、
今回はこのコレンクション展でも奈良さんの作品が多くてびっくり。
ところが、奈良さんのツイッターによると、
展示されている作品は実際にコレクションされているわけではなく、すべて寄託の借り物だそう…。
う〜ん、アート界もいろいろあるんですね〜。
コレクション展のなかでは写真の展示が良かったです。ポートレートは大好物。


奈良さんの作品はとっつきやすい作風なので過去の作品を知らなくても楽しめると思います。
けれど、過去の作品からの変化を感じられる楽しさはそれを知っているひとの特権。
そういった意味でもいろいろなひとが楽しめる、ウェルカムな雰囲気の展覧会はいいなぁ〜と思いました。